ハーメルン
帝国兵となってしまった。


 「幼年学校のほうがまだやる気があるでしょう。ダキアの好景気を考えたらこうもなるのでしょうが。」
 訓練兵たちは、まだ穴を掘る行為に疑問を覚えている。軍人の給与が安いからこうもなるか。命をかけるには安すぎる賃金だ。何より命をかけるなら石炭や石油を掘ったほうが儲かるのだ。

 「予備予算から動きがいい部隊の下士官に特別金を出して、訓練でいい成績のやつは一般兵でも下士官にすればどうだろうか?どうせ出すのは帝国の財布とキャロル公の懐だ。本当に死なれるよりかは訓練で死なれた方が実際は死ななくていい。アルベルト参謀長。頼んだ。」
 追加の書類仕事にアルベルトは少し不満そうに微笑むと彼らに伝えに行く。一応、この部隊は最新鋭の戦車や野砲などの様々な戦闘部隊を連隊規模にまとめた小さな軍であり、6個大隊で構成されて6個の兵科で別れていた。すべて機械化されている。

 そして、何よりもその部隊の活躍にお熱なのが秋津島皇国であった。理由は簡単でダキア、イスパニアと皇軍が何もしてない扱いをされて、国民に何回も公園や大学が焼き討ちにあったとのことで、佐官や尉官が大量に来ており、国内のガス抜きに精強な帝国軍と友好を組む我らが国家は強いと溜飲を下げさせるつもりだろう。彼らの代表が板柿誠一大佐とその参謀の井原寛二中佐、その下が津甚中佐らしい。

 それ以外にも倉林少佐や男爵である西徳少佐、ほかにもよくわからないが色々と総勢120名あまりが来ており、津甚中佐に関しては「我が秋津島皇国軍に御用とあれば、この旧大陸中の秋津島臣民を集めて師団による突撃を敢行してみせましょう。」と言っていたり、井原中佐も「世界大戦が起きるやもしれません。あなたの著書は読ませてもらいましたがまだ足りない。」などと電波と闘争精神あふれる発言の数々にアルベルトと二人で何こいつらと首を傾げた。

 秋津島皇国軍もこちらに惜しみなく、戦車や歩兵銃、野砲などを援助してくれたが規格が違うのでダキア本土に送り、バークマンに近代化用として渡しておいた。

 肝心のダキア精鋭を名乗るこの連隊の基本装備の方はというと、イスパニア行きの輸送艦に積み込まれる物資の中身を確認したが、今のところは歩兵は一般的な帝国のボルトアクションライフルと銃剣とピッケルハウべの帝国軍丸出しの帝国ファッション。

 では他の兵器はというと帝国軍の試験兵器で占めており、中には小銃弾に耐えうる正面装甲を持つアルミとベニアとタイルと絹を組み合わせた陸上を歩く魔導師用重装甲装備である。対歩兵用決戦兵器甲冑のあだ名を持つ、コードネーム暴徒鎮圧用煙幕なども多数送られてきており、中でも驚くべきものは煙幕発射装置という名で送られてきた多段ロケット砲だった。

 「たしかに俺の論文に書いたが‥‥。」
 そんなことは良しとしても護衛に来るダキア海軍とは言うものの帝国海軍の中古払い下げで、巡洋戦艦4隻、前弩級戦艦3隻、装甲巡洋艦4隻、旧式駆逐艦18隻からなる艦隊は圧巻で、帝国の南端の半島の付け根からダキアが買った帝国汽船の客船に乗り、これらがイスパニアを目指すのだ。

 少し積荷を積んでいる間に新聞記事を読むとこの費用の大体がダキアが算出する石油などで賄われていて、ルーシーなどに輸出していた分は国情不安という理由で取り引きを取りやめた。

 違約金は帝国が肩代わりをしているようで、更に言えば帝国の建築会社などが帝国の紐付きODAで急速にダキアへの近代化の水力発電や道路などのインフラ整備に加えて、帝国紙幣の借款により、ダキア自身もインフラ整備を進めており、ダキアは空前絶後の好景気に湧いていて、ダキア内では帝国企業の進出と帝国企業の合弁会社ができていた。

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