ハーメルン
宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル
第八話 共同戦線

2378年7月10日

 漆黒の宇宙を切り裂いて最大ワープで進む『エンタープライズE』は、『ヤマト』から提出された航路計画に基づき銀河系外縁部へと向かっており、ブリッジでは副長ライカー指揮の下に周辺宙域に異常が無いかセンサーで調べながら『ヤマト』の後を追っていた。

 そして艦長室に篭るピカードは、これまでの事を艦長日誌に記録していた。

「艦長日誌補足現 宇宙歴54991.7。現在『エンタープライズ』は『ヤマト』から提出された航路計画に基づき航行している。彼らが何を思って銀河辺境へ向かったのかは謎だが、『Q』が絡んでいる以上はただならぬ事態になる可能性が高い。早急な事態の把握をせねばならない」

 艦長日誌を記録し終えたピカードは、備え付けられたレプリケーターを操作してアールグレイを作ってデスクへと戻る。椅子に座ると紅茶を一口飲んで目を閉じる……思い出すのは『Q』が関わった事件のアレコレである。どれも厄介な事には変わりなかったが、最大の厄介事といえば『ボーグ』との接触だろう――『エンタープライズE』の前身D型艦が『ボーグ』と接触してから多くの犠牲者が出た。

 『ヤマト』の出現と『Q』の来訪、それが何を意味するのかは分からない……だが、『エンタープライズE』の艦長としてクルーの安全は守らなければならない。

 決意を新たにするピカードの耳にブリッジからのコール音が聞こえてくる、気付いたピカードは机の上の通信システムを起動した。

「どうした?」
『長距離センサーが『ヤマト』を捉えました』
「すぐ行く」

 そう答えて席を立ったピカードは艦長室からブリッジへと向かう。ブリッジに入室したピカードに気付いたライカーが、視線を向けてくる……どうやらあまり良くない状況のようだ。
 長年の付き合いからそう読み取るピカード。

「報告せよ」
「長距離センサーが3光年先で『ヤマト』を補足しましたが、付近にもう一隻の船を捉えました――『ボーグ』です」

 ここに来て『ボーグ』か、ライカーからの報告に苦い顔を浮かべるピカード。

「状況は?」
「すでに戦闘状態に入っているようです」
RED ALERT!(非常警報!) 全艦戦闘配置!」
「アイ・キャプテン。フェイザー砲用意、光子魚雷そして量子魚雷も装填しろ」

 『ヤマト』が同化されたら『ボーグ』に動力源のノウハウも渡ってしまう。それは何としても阻止しなければならない。ピカードの号令に『エンタープライズE』は搭載された全武装を起動する。

 『エンタープライズE』の船体の張り巡らされた、タイプ12の高出力フェイザー・アレイが起動し、物質反物質反応を利用した光子魚雷と共に最新鋭の量子魚雷が装填される――これはゼロポイントフィールドからのエネルギーを利用した強力な兵器である。ピカードの号令の下、戦闘態勢を整えた『エンタープライズE』はワープを解除して通常空間へと躍り出る。

「どうやら『ヤマト』は『ボーグ・キューブ』からのトラクタービームに捕まっているようです」
「トラクタービームの照射口へ向けて攻撃を集中させろ!」

 『ボーグ・キューブ』より青い光が照射されて『ヤマト』を固定している事を見て取ったライカーに攻撃を指示するピカード。

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