第十話 起死回生の一撃
ガス雲に身を潜めて『ボーグ・キューブ』のセンサーから逃れている『ヤマト』艦内では、古代発案の元に反攻作戦の準備に入っていた。後部中央第二格納庫に来ていた古代は、『ヤマト』航空隊隊長加藤と最後のブリーフィングを行っていた。
「加藤、『エンタープライズ』の方は準備が完了したとの事だ」
「了解、戦術長。しっかり配達してくるよ」
無重力状態になっている格納庫内で加藤の機体の傍まで来ていた古代は短く言葉を交わした後、機体から離れていく。エアロックに入り管制室に来た古代の目の前で格納庫が減圧されて発艦シークエンスに入る。機体がパレットからカタパルトへと移動して最初のコスモファルコンが射出され、回転したパレットに乗った次の機体がカタパルトへと移動していく。
第一艦橋の戦術席に戻った古代は、『ヤマト』格納庫から発進したコスモファルコンの編隊二十機が共同戦線を張る事になった『エンタープライズ』へと向かって行くのを見つめる。
「心配か、古代?」
「加藤達なら上手くやってくれるさ」
操舵席に座る島に答えながらも視線を外さない古代。
コスモファルコンの接近に伴い、『エンタープライズ』の方でも動きがあった。第一艦体下部より黒光りする物体が次々と放出され、『エンタープライズ』の前方へとゆっくり漂っていく。
「アレが光子魚雷か」
「連邦艦に標準装備されている兵器の一種だ」
誰かの呟きに律儀に答えるデーター。彼は対『ボーグ』戦に詳しいオフザーバーとして第一艦橋の予備科員席に座っていた。クルーが見守る中で漂う光子魚雷へとファルコンがゆっくりと近付いて行く。タブレット型をした光子魚雷にはファルコンとの接続ポイントが急造で取り付けられており、後方からゆっくりと近づいたファルコンの機体下部に張り付く。
「これで準備が整ったな」
「けど、ファルコンで巨大な『ボーグ・キューブ』に近づくなんて大丈夫かな?」
コスモファルコンの編隊全てに光子魚雷が装着された事を確認した古代に、太田が不安を訴える――全長十五・九メートルのファルコンで全長三キロの『ボーグ・キューブ』に近づき、内部へと突入して光子魚雷をキューブ内に設置するというのが古代の案である。
「『ボーグ集合体』は自分達の益にならないような技術を無視する傾向にある。コスモファルコンの仕様を確認したが、単独でワープ出来ないような機体には興味を示さないだろう」
「……加藤達には聞かせられない話しだな」
データーの説明を聞いた島は嘆息する……航空隊のメンバーはプライドが高く、そんな彼らに自分達の愛機が『ボーグ』に取っては何の価値もないなど聞かせられる訳が無い。
「光子魚雷自体が『ボーグ』の注意を引く可能性は?」
「問題ない、ファルコンに装着した時点で光子魚雷は機能を休止しているし、光子魚雷本体には特殊なシールドを張って欺瞞情報を送るので注意を引く可能性は限りなく低い」
南部の疑問に答える古代。
第一艦橋のクルー達が見守る中で、光子魚雷を装着したコスモファルコンはエンジンを起動して『エンタープライズ』から遠ざかって行く――彼らはこのままガス雲を抜けて、外で待つ二隻の『ボーグ・キューブ』へと接近するのだ。
ガス雲より飛び出したコスモファルコン二十機の編隊は目標である『ボーグ・キューブ』の姿を探す……それは思ったよりも早く見つかった。ガス雲の影響を受けるギリギリの所に停止しており、その傍には同規模のキューブが存在していた。
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