第十一話 波動砲がもたらすもの
刻は少し遡る。
『ボーグ・キューブ』の巨体を利用して1対1の戦闘を演出している『エンタープライズE』であったが、一隻のみでも恐るべき攻撃力を持つ『ボーグ・キューブ』の攻撃により『エンタープライズE』の艦体に無視できないダメージが蓄積されていった。
『エンタープライズE』・ブリッジ
「レポート!」
「デッキ4-Cと13-Dに亀裂、18-Hで火災発生、隔壁を閉鎖します。シールドは40パーセントに減少」
「キャプテン! ワープコアが不安定になっています」
「ラ=フォージ、ワープコアを何としても安定させろ!」
『エンタープライズE』の動力炉でもある反物質炉『ワープコア』が度重なる『ボーグ』の攻撃によりシールドに歪みが生じて不安定状態になっているとの報告に、ピカードは機関部長であるラ=フォージに安定させるように命じ、それを受けたラ=フォージは機関室で直接指揮を取るべくブリッジからターボリフトへと乗り込んだ。
「ナンバーワン、光子魚雷の起爆までの時間は?」
「予定時間まで60秒を切りました」
「ホーク、『ボーグ・キューブ』の間を摺り抜けるように飛べ!」
「アイ・キャプテン!」
コン・コンソールに座るホークはコンソールを操作してピカードの命令を実行する――『エンタープライズE』は大きく旋回すると待ち受ける二隻の『ボーグ・キューブ』の間を摺り抜けようとするが、二隻の『ボーグ・キューブ』より集中砲火を受けて『エンタープライズE』のシールドが波打つ。
「シールド消失!」
「エネルギーを全てエンジンに回せ! 量子魚雷発射!」
全てのエネルギーをインパルス・エンジンに回して、『エンタープライズE』は急加速で二隻の『ボーグ・キューブ』に接近しながら、切り札である量子魚雷を発射する――通常の光子魚雷よりも眩い光を放ちながら発射された量子魚雷は二隻の『ボーグ・キューブ』に命中し大爆発を起こす。
だが、巨大な『ボーグ・キューブ』を機能停止に追い込む事は出来ずに、反撃によって『エンタープライズE』の再生式シールドは限界を迎えて消失する。シールドを失った『エンタープライズE』に身を守る術はなく、二隻の『ボーグ・キューブ』は止めとばかりに武器の照準を『エンタープライズE』に向ける。
もはや絶体絶命の場面だったが、照準を向ける二隻の『ボーグ・キューブ』の艦体の奥深く――『ヤマト』の航空隊員の手によって設置された光子魚雷達のタイマーが起動して目を覚ました。
光子魚雷に搭載された数千に分かれた反物質パケットが物質と反物質の対消滅反応を起こして破壊の力を『ボーグ・キューブ』内で解き放つ――異変を感知した『ボーグ』の集合意識が艦内にフォースフィールドを張るが、一撃で小惑星を木っ端微塵にするほどの威力がある光子魚雷の複数の爆発を抑え込むにはコンマ数秒の致命的なロスがあり、『ボーグ・キューブ』内で破滅の力が荒れ狂い、二隻の『ボーグ・キューブ』は船内システムに深刻なダメージを受けたのか、シールドを消失して推進力も失っていた。
「……どうやら上手くいったようですね」
「ああ、しかしこの状況もそう長くは持たないだろう。後は『ヤマト』次第だが」
艦体にダメージを受けて宇宙空間を漂う二隻の『ボーグ・キューブ』姿をビューワーに映しながら厳しい表情を崩さないピカードとライカー――『ボーグ』艦は重要な機関を分散して配置しており、艦体の六割を破壊されたとしても機能を失う事はない。今回『ボーグ・キューブ』が停止したのは恐らくエネルギーの供給管か何かが破損しての一時的な物で、時間を置けば回復するだろう。
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