第十四話 白銀の妖精
『ヤマト』 第一艦橋
「艦内の様子はどうか?」
「艦内の至る所で『ボーグ・ドローン』と交戦状態にありますが、苦戦していますね」
沖田艦長の問い掛けに技術支援席にて艦内の様子をモニターしている真田は難しい表情を浮かべながら答える――データー少佐からの情報では『ボーグ』は同化する為に『ドローン』を送り込んで来る事は聞いていたが、『エンタープライズ』にも装備されているという転送システムを使って次々と送り込んで来る手法のなんと悪辣な事か。
倒しても攻撃方法を解析して全『ドローン』が即座に対応する為に彼らの排除は困難を極める。また倒したとしても敵艦から増援が『ヤマト』艦内に次々と転送されており隔壁を下げても意味がない……どこかで流れを変えなければ『ヤマト』は『ボーグ』に制圧されてしまうだろう。
「データー少佐、『ボーグ』の攻撃に対して何か有効的な手段はないか?」
「……まずは『ドローン』の増援を食い止めるべきでしょう。『ヤマト』の防御システムである波動防壁ならば『キューブ』からの転送を阻害する効果がありますから、まずは波動防壁の復旧を考えた方がよいでしょう」
「……艦長、敵の増援を断つ為にも波動防壁の復旧が急務です。自分は復旧作業の指揮を執りたいと思います」
「……わかった」
沖田艦長の許可を取ると真田は主幹エレベーターに乗り込んでコンバーターのある第三艦橋を目指す。
そうしている間にも第一艦橋内は艦内に進入した『ドローン』への対処に追われていた――艦内で対応している保安部隊に『ドローン』の最新位置情報を伝えつつ、的確な配置を指示しているが『ドローン』を守るシールドを破れず苦慮していた。
通信席で各保安部隊からの報告を受けていた相原は、その報告をうけた時に一瞬惚けたような表情を浮かべた。
「……すまない、もう一度繰り返してくれ……何だって!? 見間違いじゃないのか?」
「――どうした、相原」
通信を受けて混乱している様子の相原に沖田艦長が問い掛けると、通信の内容に困惑しているのか相原は戸惑った表情のまま報告する。
「……先程から『ボーグ・ドローン』に対処している保安部員からの報告なのですが、艦内に進入した『ドローン』を子供が倒していったと言うのです――あっ! 古代一尉から通信が入りました」
「……私が出よう、スピーカーに繋げ」
「了解」
相原は通信席のコンソールを操作して第一艦橋内に古代の声が響く。
『こちら古代。居住区近くの主幹エレベーターホール近くで『ドローン』と交戦していましたが……その……』
「どうした?」
『……突然、翡翠が乱入してきて『ドローン』を全て無力化していきました』
言いづらそうにする古代を促した沖田艦長は、報告して来たその内容に一瞬絶句する。そしてそれは同じく報告を聞いていた艦橋内の乗組員達も同様で、妙な静寂が艦橋内に流れた。
「……で、翡翠はどうした」
『居住区方向へ向かいました』
「そうか、引き続き『ドローン』への対処をせよ」
『了解』
通信を終えると戸惑いの表情を浮かべた乗組員達がひそひそと小声で話していた……翡翠に関する情報を最小限しか公表していないとはいえ、あれほど手ごわい『ボーグ・ドローン』を見た目は小さな女の子が無力化したというのだ。
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