ハーメルン
宇宙戦艦ヤマト 迷い子達のアンサンブル
第十五話 深まる謎

 宇宙戦艦『ヤマト」第一艦橋



 メイン・パネルに映る彼女は、白を基調とした軍服のような服を着た金色の瞳と銀色の長い髪が特徴的な、整った容姿をしながらもまだ幼さの残こしていた。地球人にはありえない髪と瞳の色に異星人かと身構える『ヤマト』の乗組員達だったが、少女は小さく頭を下げた後に話し出した。

『皆さん、はじめまして。私は地球連合宇宙軍 戦艦『ナデシコC』の艦長 ホシノ少佐です』

 ……地球連合宇宙軍。なるほど、ピカード艦長もこういう気持ちだったのかと思い返す。今にして思えば、『エンタープライズ』との初接触の折に此方が所属を明かした際に妙な表情を浮かべていたな、と思い起こしながら沖田艦長は返答する。

「私が宇宙戦艦『ヤマト』の艦長 沖田十三だ」

 そこでモニターの半分にピカード艦長の姿が映る――どうやら『エンタープライズ』も機能を回復したようだ。

『貴官も地球を名乗られるのか、私はジヤン=リック・ピカード。USS『エンタープライズE』の指揮官だ』

 何やらため息を付きたそうな雰囲気を抑えて名乗るピカード艦長……どうやら『ヤマト』と『ナデシコ』を名乗る艦の登場は彼のストレスになっているようである。

『先程まで奪われていた機能は回復している。どうやら我々は貴艦に救われたようだ、感謝する』
「我々も感謝を伝えたい」

 やはり『エンタープライズ』も『ヤマト』同様にハッキングを受けて機能を奪われていたようだ、もしナデシコが現れなければ二隻共『ボーグ』の手に落ちていただろう。ここは素直に感謝を示したい所であるが、当のナデシコのホシノ艦長は首を横に振る。

『礼にはおよびません、私達にも目的がありますので』

 彼女の金色の瞳に一瞬光のノイズのようなモノが走ると「いい加減、姿を見せたらどうですか」と話す。誰に言っているのかと訝しんでいると、モニターに第三者の姿――先ほど『ボーグ』を名乗った黒づくめの男性の姿が映し出された。その男性を見たホシノ艦長の目がすっと細められたように感じた。

『やっと出てきましたね、アキトさん』

 座った眼をしたホシノ艦長は平坦な声で黒づくめの男性に声をかける――どういう事だ、ホシノ艦長とあの男性は知り合いなのか? データー少佐の説明では、これまで『ボーグ』は色々な種族を同化してきていると言う。つまりホシノ艦長は同化された知人を救出に来たと言う事か? パネルに映し出された二人の関係性を考えながら沖田艦長は静かに事態の推移を見守る事にした。

『テンカワ・アキトという人間はもう居ない。“俺”は『ボーグ』だ』
『それは前に聞きました』
『既にテンカワ・アキトは同化され、人格は消失している』
「それはおかしい」

 二人の会話にデーター少佐が異議を唱える。

「あなたは接触時より“俺”と呼称している。『ボーグ』に同化されたのなら集合意識にリンクされて“我々”と言うはずだ」
『――そうだな、『ボーグ』には個人という概念は基本的に存在しない』

 データー少佐の説明にピカード艦長も同意する――以前データー少佐の話では、ピカード艦長は六年前の『ボーグ』侵攻の折に同化された経験を持つという。経験者であるピカードは黒づくめの男性―テンカワ・アキトを鋭い視線で見る。

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