ハーメルン
アクタージュのママの人
実際に居たら絶対に嫌な母親を演じていく男子高校生

安定して売れる映画を撮る映画監督として有名な手塚由紀治は、新しい映画の撮影を行っていた。

以前撮影したデスアイランドと同じく漫画原作だが、祖父から教わった三味線を弾く主人公が様々な出会いを経て成長していくという作品である。

スターズ所属の俳優が主人公を演じるこの作品が、失敗できない作品であると考えていた手塚由紀治は、脇役にも優秀な役者を選んでいた。

しかし主人公の母親役を演じる予定だった女優が、現場に向かう途中で交通事故に巻き込まれて入院することになり、手塚由紀治は物凄く困っていたらしい。

母親役の代役を探していた手塚由紀治が駄目元で石杖綱吉に連絡してみると、ちょうどギリギリ予定が空いていた石杖綱吉は代役を快く引き受けた。

スターズ所属の演出家でもある手塚由紀治が撮る映画にも度々出演している石杖綱吉は、代役であるが今回も母親の役でスターズ所属の俳優達と共演していく。

今回撮影される映画の主人公の母親は、祖父から主人公が受け継いだ三味線の演奏だけを評価していて、主人公独自の三味線の演奏には価値がないと考えているという人でなしだ。

頑張った主人公を褒めることもなく、完全に自分のことしか考えておらず、優しさの欠片もない非道な母親を演じることになった石杖綱吉。

主人公が三味線の大会で3位となり、大会の運営側の役職に就いている母親が主人公に表彰盾を渡すことになったところで、わざと渡す瞬間に表彰盾を落として表彰盾を壊す。

何故そんなことをしたかというと、主人公の演奏が主人公の祖父と同じ演奏ではなかったからであり、自分に恥をかかせたと判断した母親からの主人公への嫌がらせである。

自分のことしか考えていない自己中心的な母親を見事に演じた石杖綱吉。

主人公の母親が登場するシーンを全て撮り終えた映画監督の手塚由紀治は、代役の石杖綱吉が想像を遥かに超える素晴らしい演技をしてくれたことに感謝した。

必要なシーンの撮影が終わったところで、忙しいスケジュールの石杖綱吉は次の仕事がある現場に向かうことになる。

「お先に失礼します手塚さん」

「ありがとう石杖くん、今回もきみに助けられたよ」

「役者としての仕事をしただけですよ」

そう言って穏やかに微笑んだ石杖綱吉が、頭を下げて立ち去っていく姿に、石杖くんは変わらないなと思った手塚由紀治は笑みを浮かべた。

デスアイランドが放映されてから数日後に宣伝されることになる今回の作品が、売れる映画になることは間違いないと確信していた手塚由紀治は、石杖綱吉という役者の力を確かに感じていたようだ。

また別の作品で主人公の母親を演じることになった石杖綱吉。

今回は料理が下手というレベルではなく、絶対に真似をしてはいけない凄まじいものを作る母親という役であるが、こんな母親も嫌な母親であるのかもしれない。

餃子を作る時に接着剤を使い、玉子をかき混ぜる時にドリルを使ってかき混ぜるという、狂気すら感じる母親を演じていく石杖綱吉。

バレンタインデーの時に作ったハートのチョコレートはメタルな銀色で、獣の臭いがするという感じで、様々なとんでもない料理を作る母親の役を石杖綱吉は完璧に演じていった。

実際に放送される際には、絶対に真似をしないでくださいというテロップと、本物の食材は使っていませんというテロップが流れていくであろう最中にも、主人公の母親の料理と言えない料理は続く。

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