歳下にも歳上にも母親だと思われる男子高校生
復帰して直ぐに役者としての仕事が入った石杖綱吉は、食器用洗剤のCMの仕事をこなす。
フライパンの油汚れや食器の汚れを食器用洗剤で綺麗にする母親の役を見事に演じた石杖綱吉。
その仕事が終わって直ぐに、今度は別のCMで、石杖綱吉は新商品の調味料を使って料理する母親の役を演じることになった。
料理上手な母親を演じていき、実際に新商品の調味料を使った料理を作った石杖綱吉の料理が、とても美味しそうに出来上がる。
問題なく出来上がったので、料理だけを別撮りする必要はなく、石杖綱吉が母親の役で作った料理はCMにも使われたらしい。
復帰してから連続で仕事が入る石杖綱吉の次の仕事は、2時間サスペンスであり、殺人事件が起きる旅館の女将の役を演じることになった。
旅館の女将は一人娘がいる母親という役で、娘役はスターズ所属の子役の山森歌音。
殺人事件を解決していく警察官の役は熟練の俳優である白石宗であり、今では任侠映画御用達のヒール俳優となっていた白石宗が、とても久しぶりに警察官の役を演じるようだ。
共演をして一緒に親子を演じた石杖綱吉が、本当に母親のように思えた山森歌音は、母親の役を演じる石杖綱吉の笑顔に安心感を覚えていた。
しっかりと旅館の女将という役を演じながら、母親としての姿も見せる石杖綱吉と初めて共演した白石宗は、石杖綱吉という役者が、母親という役であるなら何でも演じることができる役者であることを実感していたらしい。
母親という役を演じることで誰よりも輝く石杖綱吉という役者が、圧倒的なカリスマ性を持つ王賀美陸すら呑み込んでしまうような演技ができる役者であることに白石宗は気付いた。
そして白石宗は、今では日本を離れて海外に行ってしまった王賀美陸のことを思い出す。
スターズを裏切った男に手を出す事務所は無く、日本では完全に干されていた王賀美陸には海外から声がかかり、現在の王賀美陸はハリウッドで活躍している。
天性のスター性を持つ王賀美陸にも負けずに共演できる役者と組ませて貰えなかったことが、王賀美陸がスターズを辞めた理由だ。
きみに負けない役者が、此処に居たよ王賀美くん、と思っていても顔に出すことなく警察官の役を演じていく白石宗。
そして撮影は進んでいき、石杖綱吉が演じる旅館の女将が、娘を庇って犯人に刺される場面の撮影を見た白石宗は、石杖綱吉が完全に母親に見えていた。
誰が見ても完璧に娘を庇う母親に見えていた石杖綱吉の演技は、更に進化していく。
娘を庇う瞬間の覚悟した表情、刺された痛みに歪む顔、流れる血糊が、まるで本物の血液であるかのように見える迫真の演技は、石杖綱吉の見せ場だった。
娘を庇う母親の強さを見せた旅館の女将役の石杖綱吉に、駆け寄る警察官役の白石宗。
母親にすがり付いて泣く娘を演じている山森歌音は、石杖綱吉に演技を引き上げられていて、しっかりと本物の涙を流しており、泣く娘を演じることができていた。
救急車に乗せられて運ばれていく旅館の女将を見届けた警察官は、旅館の女将の娘に、犯人を必ず捕まえることを約束する。
それから犯人を追い詰めた警察官が、激しい格闘戦の末に犯人を捕らえて手錠をかけるとパトカーに犯人を連行していく。
最後に、病院には入院しているが元気そうな旅館の女将と、その娘が病室で抱きしめあっている姿を見た警察官が微笑んで終わりとなった2時間サスペンス。
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