ハーメルン
ナルトが綱手に引き取られる話
ナルト、里へ帰る(12歳)


閑話①

17の時、九尾が里を襲った。
優秀な忍であった両親と祖父母は九尾から里を守るために前線へ行き、そのまま帰らぬ人となった。一夜にして天涯孤独となった俺は婚約したばかりの妻を守ることを生きる理由とすることで、何とか悲しみを乗り越えようとした。しかし、その妻も九尾事件のトラウマからPTSDを発症し、不眠、減食、嘔吐など数々の苦痛を発露するようになり、散々苦しんだあげく、事件から四年後静かに息を引き取った。

親を失い、守ると誓った妻も守れず、何も守れない、救えない自分に絶望した。それが九尾への憎しみと交わり、いつしか九尾を宿すナルトをも憎むようになっていた。だが、忍は知っていた。ナルトは何も悪いことなどしていないと言うことを、むしろ里のために犠牲となったと言うことを、ナルトを恨むのはお門違いだということも、

しかし、それでも、心の中で膨れ上がる怒りを解消するためには、自分の中の絶望と憎悪をぶつける相手が必要だった。その相手が九尾(カタキ)を宿したナルトになるのはある意味仕方のない事だったのかもしれない。しかし、その忍が他の者と違ったのは、自身の行いを正当化するために、周りを煽り、同族を増やし、理不尽を当たり前に変えたことだった。ナルトには何をしても構わない、何をしようとそれは正当な復讐なのだ、そんな空気を作り上げてしまったのだ。むろん、この忍が全て悪いわけではない。木の葉に住む誰もが少なからず罪を持っている。見て見ぬふりをしたものも、めんどうーだと口を出さなかったものも、周りに流されただけのものも、──しかし、少なくともこの忍が動く前は直接的に暴力を振るわれることはなかったのだから。

彼の名前はルウエンと言う。










閑話②

ある娘が野盗に襲われて死んだ。

仕方の無いことだった。

いくら復興がなったとは言え、戦争が終わってまだ数年と少し、どの里も戦前よりも治安が悪い場所が増え、それに比して不幸な目に逢うものも増えた。

誰が悪いのかと言えば野盗が悪く、次に誰が悪いのかと言えば野盗を野放しにした里が悪い。しかし、野盗は既に潰されており、復讐することはできない。里に抗議したところで最悪反乱分子と思われるだけで死人が帰ってくるわけでもない。故に残された遺族はポッカリと空いた心を癒すことも出来ずに、痛みから目を逸らして生きていくしかない。それがこの理不尽な世界での弱者に強いられる当然の運命。たった一人の村娘の死など里に大した細波を立てることすら出来ずに忘れ去られていく。そうなるはずたった。

しかし、今回は違った。
娘の訃報が届けられた日、丁度ナルトが独り暮らしを始めた。

本来その二つには何の関係もない。ただ偶然時期が重なっただけである。しかし、遺族にとってはそれだけで充分だった。

アイツのせいだと誰かが言った。

それは大きな声ではなかったが不思議と穴の空いた心に入っていった。

そうだ!あいつが悪いんだ!と誰かが答えた。
それに呼応するようにまた一人また一人と、ナルトを非難する声が上がる。

あいつのせいだ!
あの化け狐が生きてるからだ!
あの化け狐が何かしたにきまってる!
今まで生かしてやったのに恩を仇で返しやがって!

それが八つ当たりでしか無いと言うことも、ナルトに非はなく、ただ懸命に生きてるだけだということも、その忍達は知っていた。しかし、里に蔓延る空気が彼等の背を後押ししたのだ。

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