第六話「バギーおじちゃん」
「ちょーーーっと待ったぁー!!!!」
酒場のテラスに全力疾走でやってきたウタは、開口一番に叫び声をあげた。
意味が分からないままに引っ張られて連れてこられたルフィは、ウタの手にぶら下がったまま、
「さっきからなんなんだよ、ウター」
「なんでそんな呑気なの! あれ見て、ほら!」
案の定、剣を抜いたゾロとバギー海賊団が睨み合っている。
「あ! ゾロー! きてたのか!」
「ん? ルフィじゃねえか、やっと見つけたぜ」
笑顔で再会を喜ぶ二人だが、そんな場合じゃないことを理解しているウタとナミは頬に汗をかく。
「ねえ、ウタ! あの血の気の多そうなバカは誰!?」
「ゾロ! 血の気の多いバカだよ!」
「てめぇらぶった斬るぞ!?」
牙すらも剥いたゾロの後ろで、悠々と大きな椅子に腰掛ける、ピエロのメイクをした小柄な海賊が声を上げた。
「なんだなんだァ? 今日は随分と客が多いじゃねェか……」
まさに一触即発の緊張感の中、バギーがこちらへと歩いてくる。
「どこの誰だか知らねえが——」
「久しぶり! バギーおじちゃん!」
「ウ、ウタァ!?!?!?」
バギーは飛び跳ねて驚いていた。
相変わらずのオーバーリアクションに、ウタは思わず笑う。
「変わらないね! 元気?」
「元気も元気! こうしてたんまり酒も飲んでるからな!」
バギーはジョッキに並々注がれた酒を一気に飲み干して、ぷはーっと息を吐く。
現状は問題がたっぷりだが、とにかくバギーが元気そうでウタは頬を緩ませる。
バギーの顔を見た途端に、昔の記憶が蘇ってくる。
「ねえねえ、あれやってよ! 犬の散歩!」
「んー? ったく、仕方ねえなぁ」
やれやれと、バギーは手首を回して。
右の手首を、スポンと取り外した。
(え、腕が取れた……?)
言葉を失うナミのことなど気づきもせず、バギーは自分の右手首を地面に置いた。
「ほーら、散歩だぞ! おれの右手首!」
てくてくてくてく。
バギーの指が可愛らしく動いて、ゆっくりと進み始める。
少し遅れて、バギーもそれを追いかけるように歩き出す。
「あははははっ! 可愛いー!」
「ぶわっはっはっはっ! そうだろ! おれの右手首は可愛いだろ…………って何をやらせてんだあ!」
渾身のノリツッコミが入り、ウタの笑い声がさらに大きくなる。
一通り笑い終わると、ウタはルフィたちの方を見て、
「紹介するね! 私の知り合いのバギーおじちゃん! ご覧の通り、バラバラの実を食べた全身バラバラ人間なの!」
「全部バラしやがったなウタァ!?」
「いーじゃん! それとも、もっと別の事の方がよかったー?」
「きぃいいー!! お前と話してるとシャンクスを思い出してイライラするぜ!」
バギーの言葉に、ルフィが反応した。
「お前、シャンクスのこと知ってるのか!」
「知ってるも何も! あいつは俺から夢を奪ったクソ野郎だ!」
「バギーおじちゃんは昔、シャンクスと同じ船に乗ってたんだけど、シャンクスが声をかけた拍子に間違ってバラバラの実を食べちゃったから、海底の財宝を狙えなくなったって怒ってるんだよ!」
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