10
■
それで……ああ、そうそう。その後ね。
「ここなら、大丈夫でしょう」
会場の外ってか、屋敷の中庭の近くにテーブルとイスが何組かだけ用意された休憩スペースがあって……ってか、アレだ。俺がいつもタバコ吸ってるところ。そうやって言った方が分かりやすいか。そんな感じのとこに、無理やり座らせられたわけ。
「……マジでお前、その尻尾癖何とかした方がいいぞ」
「トレーナーさんがもっとお利口さんにしてくださるなら、考えますよ」
「あっそ」
まあ、そんな感じでいつものやり取りしてさ。
「それで? なんかマズいこと言ったか、俺?」
「いえ、先程も申し上げましたが、そういったことではありません。ですが……やはり、トレーナーさんの態度や言葉遣いは、いかがなものかと思います」
「……それ言うなら、向こうも同じだろ。あんなこと言われて、お前も腹立ってんじゃねーのかよ」
「ですがあの場にいる方々は、少なからず私たちを応援してくださっているんですよ? それならば無礼のない振る舞いをしなければいけません。ですから、それができないトレーナーさんには少しここで落ち着いて、無礼のない振る舞いというのがどういったものなのかお考えいただければと」
「つまりアレか。場違いだからお前はここで大人しくしてろ、ってことか」
「そういうことになりますね」
「……そーかよ」
そう答えられた時点で、もうほとんどやる気無くしてさ。会場に戻る気力っつーか、何ならそこで帰るまであったのね。パーティーのあとに手続きとか、色々やることあるって知らされてたから、帰らなかっただけで。
そんでまあ、イライラしてたから吹っ切れて愚痴も出ちゃってさ。
「……だから、来たくなかったんだよ。どうせこうなるって分かってたから」
「それをご自身で理解していたのに、ああやって言われてしまったのですか?」
「当たり前だろ。自分の担当にあんなこと言われて、黙ってるトレーナーなんかいねーよ。何も知らねーくせに、好き放題言ってくれやがって……つーかさあ、俺と話す気あんなら、子供に対してウダウダ言うんじゃなくて、最初っから俺にケンカ売ってこいよな。ああもう、ホントイライラする……」
みたいな感じで、愚痴ってる俺にさ。
あいつ、なんか知らねーけど嬉しそうっていうか……変な感じで笑ってきて。
「そのご様子では、やはりここで落ち着かれた方がいいかもしれませんね」
「ああ、そーするよ。悪ぃけど、俺はもう今回パスするわ」
「そうですか」
そしたらあいつ、勝負服のポケットに手ぇ突っ込んで。
「まあ、というのが建前でして」
みたいなこと言いながらさ。
俺に、新品のタバコ渡してきたの。
「……は?」
「あら? もしかして、銘柄を間違えてしまいましたか?」
「いや、合ってるけど……え? なんで?」
「そろそろ、でしょう?」
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/10
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク