第10話『少年の父と軍人とプロレスラー その2』
範馬さんとの喧嘩が終わった後、範馬さんと夕食の約束をしてストライダムさんに送ってもらい一度家に帰った。
「さて、先ずはシャワーを浴びたら病院かな」
病院で鎬先生に診察をして貰うと胸骨が折れていた事が判明。道理で痛みがあるわけだよ。もっと鍛えなくちゃ。
診断書と領収書を持って猪狩さんの所に顔を出すと呆れた顔をされる。
「まぁなんだ、いい機会だから興行は卒業まで休んじまえ」
そんな感じで高校卒業まで興行を休む事に。話を聞いてみると現役の学生である俺に興行をさせる事に対するお気持ちを表明する人がそれなりにいるんだとか。
「余計なお世話ですね」
「出る杭は打たれるってな。まだ若いお前が名を売ると、それが気に食わない輩はどうしたって出てきちまう。まぁ、諸々の対応は俺に任せて残った学生生活を楽しんでこいや」
そんなやり取りが終わって家に戻るとストライダムさんが迎えに来ていた。何度もお疲れ様です。
「三浦、用事は終わったかな?」
「はい」
「それじゃ行こうか。勇次郎が待っている」
そうして連れて来られたのは都内の高級ホテルの一つだった。
ストライダムさんに案内されると広い部屋の中央にテーブルが一つだけあり、そこで範馬さんが待っていた。
「来たか」
「はい、お待たせしました範馬さん」
「勇次郎だ」
彼がそう言うとストライダムさんが驚いた顔をする。
「じゃあ勇次郎さんで。俺も良意でいいですよ。今日はご馳走になります」
「ふん……」
ベテランの雰囲気を持つホテルマンが機を見て次々と料理を運び込んでくる。料理はいわゆるジビエ料理というやつだ。
「美味いですね」
「家畜には決して出せない野生の味だ」
しばらく料理に舌鼓を打ち時間が過ぎていく。そして一通り平らげた後、勇次郎さんに話し掛けた。
「スッキリしましたか」
「あぁ」
「それはよかった。興行があったりするんでいつでもとはいきませんが、たまにでよければ喧嘩に付き合いますんで。まぁ高校卒業まで興行を休む事になったんでしばらくは暇なんですけどね」
そう言うと勇次郎さんはニッと笑ったがストライダムさんは驚いて口を開いた。
「待ってくれ三浦。君は先程の戦闘を喧嘩だというのか?」
「はい、そうですけど?」
そう答えるとストライダムさんは口を半開きにして首を横に振る。
う~ん……戦闘だなんて大袈裟だなぁ。
◆
side:ゲリー・ストライダム
信じられない言葉を聞き思わず声を上げてしまった。あれほどの激しい戦いが戦闘ではなく喧嘩だと?信じられん。
「互いに殺意もなく防御もしない戦い……そんなものが戦闘である筈もない」
勇次郎にそう言われ思い返してみれば、確かに戦場特有のあの空気は微塵も感じられなかった覚えがある。
「で、ではさっきの喧嘩はどっちが勝ったんだ?」
「あえて勝敗をつけるなら勇次郎さんの勝ちでいいんじゃないですか?俺は最後の一発で胸骨を折られちゃいましたし」
私は今日何度驚けばいいのだろうか?何の気負いもなくそう言う三浦に続けて問う。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/2
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク