第15話『空手界の最終兵器とプロレスラー その3』
「三浦さん、俺の下段蹴りを止めたアレですけど、何ですか?すっげぇ痛かったですけど」
「あぁ、斧刃脚のことかな?」
克己君との組手が終わった後、俺と克己君はシャワーを浴びてから鎬先生の所へ行き、それから独歩さんの案内で見覚えのある料亭で飯を食い始めた。
そして飯を食い始めると克己君から質問攻めにあっている。それに俺が答えるんだけど克己君の好奇心は中々収まらない。
「サッカーのサイドキックみたいな形で踵を使って蹴るから一見地味なんだけど、使い手によっては一撃で相手の脛を砕くことも出来る技だね」
「そして克己相手に使ったみてぇに迎撃にも使える代物ってな。他にも応用がありそうだな?」
独歩さんは時折こうして注釈を入れてくれたりするけど、だいたいは克己君同様に好奇心を満たしにくることが多い。
強さに対する貪欲さは筋金入りのものを感じるね。
「えぇ、サッカーのトラップみたいに相手の蹴りの威力を吸収した後に、そのまま相手の足を踏んで崩したりもしますね」
「なるほど?」
二人は箸を置くと立ち上がって座敷の端っこで動きを確かめ始める。それを尻目に俺は箸を進める。うん、美味い。
「ちょっと失礼」
「折角食ったのを戻すんじゃねぇぞ。そんなんじゃ身体を作れねぇからな」
「言われなくてもわかってるよ」
しばらくすると限界まで食べたのか克己君は苦しそうに席を立った。
克己君が座敷を出ていくと独歩さんがため息を吐く。
「あいつは食が細くていけねぇ」
「頑張って食べた方だと思いますけどね」
「俺が若い頃には酒を飲んで胃をバカにしてたらふく食ったもんだが、立場上そうするわけにもいかんのがなぁ」
「猪狩さんも同じことを言ってましたね」
「食わにゃ強くなれねぇからな。空手に限らずプロレスに相撲と、日本の格闘技界じゃ少なからずあったやり方だな。まぁ、今の御時世にそれをやってバレたらうるせぇからなぁ。やりたくてもやれねぇのが現状だ」
だからこそ一度の食事で済ませず何回にも分けて細かく栄養補給をするやり方が現代の主流なんだけど、幸いと言っていいのかわからないが俺は猪狩さんと会ってからは量を食うに困ったことはない。
「それで良意、どうよ?」
なんで猪狩さんといい独歩さんといい主語が抜けるのかな?まぁ、勇次郎さんと比べたらわかりやすいけどさ。
「端的に言って天才ですね。師父が言ってた種類に分別するなら『思念』の天才ってところかなと」
「種類?」
「えぇ、師父が言ってたんですけど、武の道には主に3種類の天才がいるそうです」
食後の焙じ茶を飲んで喉を潤してから言葉を続ける。
「『身体』の天才、『感』の天才、『思念』の天才の3種類の天才です」
「なるほど……確かにそうかもしれねぇな」
身体の天才は文字通りに恵まれた身体を持った者のこと。感の天才は身体操作や力の流れ、意識の感知等に優れている才を持つ者のこと。そして思念の天才は……イメージをする才能に優れている者のことだ。
身体と感と比べて思念?となる人が多いが、イメージが人の身体に与える影響はかなり大きい。まぁ、実体験してみないと理解や納得がしにくいけどね。
「組手の後半で迎撃が多かったのは克己の才が理由か?」
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