第2話「西暦2202年 ガトランティス戦役の最中で・後編」
それは地球暦2201年7月16日のことだった。
場所は北アメリカ地区東海岸。
復興を始めたばかりのニューヨークにおいて、ガミラス帝国在地球大使であるローレン・バレル、地球連邦防衛軍長官の藤堂平九郎、そしてイスカンダルから遥々やってきたユリーシャ大使ら3人が地球連邦本部ビルに集った。
その目的は《地球・ガミラス・イスカンダル和親条約》の調印、及び《地球・ガミラス相互協力条約》の調印のためであった。
前者は三者の間に和平を結ぶと共に、波動砲の装備・使用に対して制限を加えるものであり、前時代ガミラス戦役以前の時代を主に指す通称に存在した国際連合における「核拡散防止条約」と役割が似ていた。
これにより波動砲はあくまで防衛のために用いるものであり、戦争目的で使用することを事実上の禁止とした。
(ただし、地球に巨大隕石などの外敵災厄が迫った場合の使用、及びワープジャンプ後に次元断層に迷い込んでしまった場合の脱出手段として用いるなど、生命の危機に陥った場合には「防衛」と見做して限定的に使用を許可する)
そのため、ナガトやサツマなどのドレッドノート級重巡洋艦、新型のプリンツ・オイゲン級の軽巡洋艦などに搭載されている波動砲は、イスカンダル条約の違反にならないように安全プロトコルが用意され、艦載のAIがイスカンダル条約の規定違反でない範囲でならば波動砲の使用を許可し、プロトコルを解除する仕組みになっていた。
つまり、裏を返せば波動砲の軍事利用を人工知能の管理によって事実上禁止した。しかも、このAIはイスカンダルの技術でプログラミングされており、許可なくAIのプログラムを細工しようとすれば、プログラムがウイルス化し、接続されているシステム全体を蝕み、最終的に細工した人物を死に至らしめる。
また、地球・ガミラス相互協力条約は、ガミラス戦役により事実上の壊滅状態に陥っていた地球の再建をガミラスが援助し、必要な人員や技術を提供すること。
その他にも地球連邦の防衛能力が回復するまでの間は地球・ガミラスの相互防衛条約が有効であることや、ガミラス側が奪った太陽系の領有惑星の返還、及び場合によっては領土の割譲や開発の支援などが条約に盛り込まれていた。
この二つの条約は地球政府、及びガミラス政府多数の反対があったものの、最終的には可決され、成立した。
その後色々とあったのだが、一旦この場では割愛する。
条約調印からちょうど1年後の2202年7月16日午後。
古代は日本の新東京に設けられた地球連邦防衛軍本部の廊下を急ぎ足で歩いていた。目的地は長官室。途中で憲兵二人に呼び止められた。
「あなたは?」
「地球連邦宇宙軍第二艦隊所属の古代 進中佐。重巡洋艦サツマの艦長だ。地球連邦防衛軍の藤堂長官に大至急話をしたい!」
「いけません」
「長官は今お忙しいのです」
「だが……」
「すまないが通してくれないか。私は長官に呼ばれているものでね」
その声に聞き覚えがあり古代が振り返る。古代が言うより早く憲兵の一人が言った。
「あなたは、土方提督!」
「この古代艦長は……私の補佐役だ。通してくれないか?」
「は、ははっ!」
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