009:ギャング・カポネ=ベッジ①
「お前たちが腑抜けにした連中の中に海兵共がいただろう」
「あの裏切者共か」
「そうだ、奴らはリスト屋とこの船までの運搬役なのさ」
数十名にもなる繋がれた海兵たちをしり目に、ギャングと海賊の話が続いていた。
「リスト屋は海軍の人事関係に深くかかわっている奴でな。天竜人からの要望を元に、それに見合う連中を見つけ出してリストアップする」
「レストランならぬヒューマンショップのメニュー作成というわけか」
「そういうことだ」
海賊の方は、自分の仲間を念のために船に戻していた。
ギャングも海賊もアウトローで、かつその人間性はピンキリだというのは共通している。
海賊――クロという存在になった男は、これから先のカポネという『可能性』は知っていても、船長として今のカポネを無条件で信用するわけにはいかなかった。
「そしてそのメニューから選ばれた栄えある海兵が、任務やら航海訓練やらで……あぁ、事故に遭う。陰湿で、不可解で、不運な、事故にだ」
一言ずつ強調するギャングの言葉に、海賊は不快そうに眉を顰める。
「そして事故に遭った海兵は出荷される、か」
「お前が潰したレッドラインの山賊連中も一枚噛んでたんだぜ? まぁ、ほぼ名前を借りて事故の原因と推測させていただけだが」
「………あの弱さで懸賞金が高かったのはそういう理由か……」
「まあ、レッドラインの山賊なんざ基本マリージョアから捨てられて、なんとか裏側で生き残ってる連中だからな」
「それ潰してなんで自分の名が上がるんだ……」
「レッドラインを横断したんだぞ? あの崖よじ登っただけでも偉業っちゃ偉業だ」
「よじ登るとか疲れるだろう……」
「ならどうしたんだ? 他に抜け道が?」
「走って登った」
「意味わかんねぇよ!!!」
ギャングのツッコミを他所に海賊は一度、まさに出荷されつつある海兵達を一瞥する。
「にしても、若い女海兵が多いからまさかとは思っていたが……やはりか」
「他にこうして海兵が運ばれる理由があるか?」
「ファミリーとつるんでいたが土壇場で裏切った連中がケジメのために身柄を――という可能性も考えていた」
「……なるほど、確かに有りうる。お前やっぱり頭が切れるな」
「だが、こう言うのもなんだがよく今まで漏れなかったな。アイツらは……飽きっぽいだろう」
海賊は読み物としての知識からそう言うとギャングは笑って、
「キチンと決まりがあるのさ」
「絶対に捨てない……とかじゃあないんだろうな」
「あぁ、飼うのは自分の敷地内のみ。そして飽きて処分するときは絶対に殺す。それがルールだ」
ギャングは底意地の悪い笑みに顔をゆがめて続ける。
「ただ殺すんじゃねぇ。海兵の証拠である衣類はもちろん、身体も骨すら残らないように処分される。顧客によっては死に様すらショーにしやがる」
「……そしてそれは、納品される商品にも知らされる?」
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