ハーメルン
とある黒猫になった男の後悔日誌
015:腹に括った槍

 お、おおおおちおちおちっつばばばばばばばっばばっばばば!
 まだだっだだあわあわわわてあわわわわ!!!

 なんで!? なんでロビンの事バレてんの!!??

「いやぁ、あの樽重かったでしょ。重い物を空っぽのつもりで持ち上げると腰に来るから気を付けなきゃだめよ?」
「そうなんですか。よくわかりませんし、まだ自分には早い話のような気がしますが肝に銘じておきます」
「うんうん、そうした方がいいよ。体は大事にしないとねぇ」
「はっはっはっは」

 見てたんかい! そういやちょくちょく確認してたとか原作でも言ってたな!
 はっ倒すぞこのボケェ!!

「もう一個いいかな、クロ君」
「……なんでしょうか」
「あらら、警戒しちゃってる?」
「海兵を警戒しない海賊なんていますか?」
「うん、それもそうか」

 オハラの一件が起こったばかりだから原作開始まで大体二十年か。
 てっめこの腹黒陰険糞野郎、二十年後に覚えておけよ! ぶっ飛ばすからな!?

 …………。

 ルフィが!!

「まぁ、最初からこっちの事を聞きたかったんだけどさ」

 じゃあ最初に聞けよと怒鳴りてぇ。
 この熱いお茶ぶっかけたらちょっと溶けないかなコイツ。

「君、どうしてここまで海兵のために無茶してくれたの? 基地の近くとまではいかなくても、適当な島でバイバイしておけばよかったんじゃない?」
「あぁ、それに関してですか。簡単です」
「簡単?」
「はい、自分が弱いからです」






◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇






 自分を弱いと言った海賊の目に偽りは一切ない。
 だが、その弱い海賊の目に、中将クザンは一瞬気圧されていた。

「自分は弱い。それは誰よりも自分が分かっています。だからこそ、ここで海兵を見捨てることは出来ない」

 海賊は気付いていない。海兵が自分を見る目に熱が宿った事に。

「別れる事は考えました。適当な街がある島の端っこに置いていくことも。……最初の密輸船襲撃計画でも、略奪後は素早く遠くへ離れる予定でしたから」
「当然食料もそれだけ積んでたわけだ。だけど食い扶持が増えれば遠くへはいけない」
「だからといって海兵達を船から降ろせば、おそらく彼女達はとっくに関係者に捕捉されていたでしょう。その可能性に思い至った時点で、自分に退路はありませんでした」
「どうして?」
「その先に、逃げ続けるようになる自分の姿を見たからです」

 海兵は小さく、ほぅっと息を漏らす。

「気が付けば懸賞金が懸けられていた身です。一人で逃げ切るのは難しい、仲間は必要だった。だけど逃げ癖がつけば、いつか自分のために仲間を切り捨てるようになるでしょう」
「その生き方は……」

 海兵は、心の底からこの海賊に同情してしまっていた。
 天竜人に目を付けられなければ、この男はごく普通に生きて行けただろう。
 スーツに身を包んだこの少年は、きっとどこかの商人にでも弟子入りしていればそのまま大成して、ごく普通に――幸せに暮らせただろう。

「その生き方は……きっついよ」



「承知はしていますが……」

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