バーサス・AIM
「ベースキャンプまで20分ってとこか」
「副大統領に連絡を入れた。警備を敷くそうだ」
「それ嘘っぱちですよ。何も問題ないって言ってます。もしかして副大統領グルだったりしません?」
「なに?」
「いや、ゼアに頼んで回線遡って盗聴したんですけど、警備なんてしないでなんも問題ないって言ってますよ副大統領」
「「……」」
偽マンダリンのモーターボートの上で作戦会議をする俺たち、トニーさんの伝手で副大統領に直接ホットラインを繋いで状況を説明したローズさんの期待を裏切る結果に終わったことを携帯に潜り込んだゼアの報告を受けた俺が伝えると二人そろって無言になった。上が裏切ってたか、って感じだよね。
「そうなるとペッパーを助けるか大統領を助けるか……どちらもは無理だぞ!?」
「俺が大統領助けに行くのがいいんじゃないですか?トニーさんたちはそのままペッパーさんを助けに行けば……」
「いや、ハルには居てもらわないと困るな、君はこの状況に於いてのワイルドカードだ、全てをひっくり返せるかもしれない」
「じゃあどうする!?」
「僕がやろう、J.A.R.V.I.S、飛行システムは?」
『マーク42の全機能のリブートを確認。使用可能です』
「よしきた、船室借りるぞ」
ガチャガチャ、とスーツを脱ぎ捨てたトニーさんが船室に入る、あ、そういえばスーツだけで遠隔操縦できる機能を搭載してるんだっけ、つまり移動中に助けてしまえっていう感じか。いかにも軽い感じで始めたけど大丈夫かな……
「J.A.R.V.I.S、ゼアを補助に入れるから受け入れてもらえるかな?指示をくれればその通り動くから」
『了解、ゼアとの接続を了承します』
ゼロツープログライズキーの中のゼアをJ.A.R.V.I.Sとリンクさせてトニーさんの補助に乗り出した。ふぅー、と息をついて座り込む。ゼロワンドライバーはつけたままだけど変身は解いてる。傷一つないけど精神的な疲労がどっと襲ってきてる感じだ。特に、リミッターかかった状態とはいえ人を思いっきり殴った、これが結構きてる。まだ俺がそういうのに慣れてないからかな……
「どうした?大丈夫か、ひどい顔色してるぞ」
「……思いっきり人を殴ったの、初めてだったんです。感触が消えなくって……」
マーク42が飛び立ち、トニーさんが救助に移ったのを見て、船をクルーズモードにしたらしいローズさんが手を握ったり開いたりしてる俺を心配そうに話しかけて来てくれた。思いっきりエイリアンを殴った経験も最悪だったけど、生身の人間の感触はもっと最悪だったな。顔面思いっきりいったから歯とか頬骨とか折れてるかも……
「……そうか、こんな状況だから、逃げていいなんて言ってやれないが……あまり自分を追い詰めるなよ。全部終わったら……そうだな、俺のとっておきの武勇伝でも聞かせてやろう。爆笑必至だ」
「はは、ありがとうございます。楽しみにしてますね。あ、向こういったらこれ使ってください」
真面目ゆえか不器用ながらも慰めてくれるローズさんの言葉をありがたく受け取ることにした俺はスーツがないんじゃ不安だろうと思ってトランク状態のアタッシュショットガンをローズさんに手渡した。俺は反動に振り回されて大雑把な狙いしか付けられないけど現役軍人のローズさんならショットガンは使い慣れてるはずだ。
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