ニューヨーク・ホッパー
力任せにプログライズキーをゼロワンドライバーに叩き込んだ瞬間、ドライバーがプログライズキーを読み取り俺の身体がスーツに覆われていく。真っ黒の素体、まるで骸骨のようなスーツだ。エイリアンを踏みつぶしながら飛び回ってたバッタが俺の真後ろのバスを飛び越えて分解されて俺の周りに漂う。
「飛び上がライズ!ライジングホッパー!」
「A jump to the sky turns to a rider kick」
景気のいい音声が鳴り響き、分解されたライダモデルがアーマーとして再構成される。蛍光イエローのアーマー、バッタのようなデザイン。仮面ライダーゼロワンライジングホッパー……俺がこの世界に産まれ、前世からひきずって来たもの。いつの間にか俺と共にあった「力」……けど、今はどうだっていい。自分のためじゃなくて誰かのためにふるえるなら、きっと間違えないはずだ。
「お前たちの力の責任は、お前たちが払え!」
「ブレードライズ!」
地面に落としていたアタッシュケース、アタッシュカリバーを変形させる。文字通り剣になったアタッシュカリバーを振るいバスの前面のガラスを大きく切り取った。紙より情けない手ごたえののち、バスの逃げ道が完成する。
「逃げろ!」
あんぐりと口を開けてポカンとしていた運転手と子供たちにそう言って俺はライダモデルに踏みつぶされた混乱から立ち直りつつある残りのエイリアンどもに突っ込んだ。ライジングホッパーの特徴である跳躍力を活かし、思いっきりジャンプをしてエイリアンどもの注意を引く。人工知能と同レベルまで加速された思考が対処の順番をはじき出す。構えられた銃から発射されるエネルギー弾をアタッシュカリバーで弾いて着地点にいたエイリアンを袈裟懸けにした。
鎧のようなものを着ていたにも関わらずほとんど抵抗なく斬られ絶命するエイリアン、手に残る感触を気持ち悪く思いながら残りのエイリアンに斬りかかる。俺の素人丸出しの攻撃で防御の上から切り捨てられ、殴り飛ばされ、蹴りでぶっ飛ぶ化け物たち。こんな化け物相手でも仮面ライダーという力は過剰だったようだ。
テレフォンパンチで防御された腕ごと殴りつぶし、前蹴りでビルにめり込むほど吹っ飛ぶエイリアン。こいつら本当になんなんだ?数だけは本当に多いみたいだが。奪った命の数が40を超えたあたりで周りのエイリアンはひとまず全滅したらしい。後ろでバスから逃げていく子供たちと運転手にほっと一息ついた。
「なあ、あんた何者なんだ!?」
「…………ゼロワン」
最後の子供を下ろした運転手が尋ねてくる。俺はシステム名だけ言って走ってその場を後にする。だって俺はとても「仮面ライダー」なんて名乗れない。人の自由と平和を守る利他の戦士の力を自分の都合で使わず、今更になって人のためなんて言ってふるってる俺が名乗っていい名じゃない。俺は力を持っただけの臆病者だ。それでも、今この場だけは強くあろう。人を助けるんだ。
黄色の残光を残しながら道を駆ける。後ろから乗り物に乗ったエイリアンがエネルギー弾を撃ちながら追いかけてきている。回避しながらジャンプ、壁を蹴って乗り物に飛び蹴りする。拉げた乗物からエイリアンが落ち、地面に体を叩きつけられて動かなくなる。道にいるエイリアンを切り捨てながら大通りに出るとそこには全身黒いスーツを着たスパイのような女と青い星条旗のようなコスチュームを着た男が盾を振り回しながらエイリアン相手に大立ち回りを繰り広げていた。
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