エンカウント・アイアンマン
「さて、これどうしようかな……」
誰もいない自宅の中で、俺は一つの物体に向き合っていた。それは勿論、ゼロワンドライバーとゼロツープログライズキー、即ちゼア……ではない。じゃあ何かと言ったら前使ってたオンボロキッチンカーをニューヨークまで迎えに行った時にアイアンマンの中身ことトニー・スタークに渡されたUSBメモリである。
別に外面はおかしなところはないし、俺のプログライズキーのように押すとアビリティの名前を叫ぶボタンが付いてるわけでもない。いたって普通のUSBメモリである。ちなみにこれは俺にとって最大の厄ネタになりつつある。あのお騒がせヒーロー、アイアンマンから手渡しされたUSBメモリだぞ?何が入ってるどころか差したらえらいことになりそうで……怖くて触れなかったのだ。
「だけどこれ……いつまでもほっておくわけにはいかないだろうなあ……」
多分どころか確定で俺の中身を知っているであろうアイアンマン、彼が黙ってくれてるから俺はいつも通りの生活をおくれてるわけで……ある意味で恩人なのである。まあ世界にとっても恩人なのだが。なのでいつまでもこの見るからに不穏なオーラを醸し出すUSBメモリを放置しておくわけにはいかないのだ。いやマジで。
とりあえず、あれだ。全力で防御しつつ差してみることにしよう。そんなわけで俺のごっついスマートフォン、飛電ライズフォンにゼロツープログライズキー、即ちゼアを直結させた後、USBメモリをライズフォンにぶっ刺した。これならたとえハッキングを受けてもゼアが何とかしてくれるはずだ。なんせゼアは最強!ハイパームテキな人工知能だから!……え?トニー・スタークは天才?そうねえ……。
「やっぱりハッキングしてきてるやん!」
ライズフォンがピコピコ画面変わった後エマージェンシーの画面に変わる。ゼロツープログライズキーのレンズが青く点滅してハッキングプログラムを除去していき、綺麗になったUSBメモリの中身には動画ファイルが二つ入っていたが、一つはハッキングプログラムに紐づけされていたようでハッキングプログラムが除去された時点で破壊されて見れなくなってしまった。仕方ないのでもう一つのファイルを開いて再生してみる。
『やあ、イエローマスクくん。君がこっちのファイルを見ているということは僕のハッキングを切り抜けたということだろう。素晴らしい、60点だ。おっと自己紹介がまだだったな。おいダミー!今度やったらスクラップにするからな!……んっん!改めて僕はトニー・スターク、巷ではアイアンマンなんて呼ばれてる』
「なんだこいつ」
やっべヒーローにとんでもない暴言を吐いてしまった。いやそれ抜きにしてもなんなんだよ。素晴らしいっつーんなら90点くらいくれよ、それはどうでもいいとしてハッキングに成功したパターンと失敗したパターン両方で動画を用意しているとか用意周到なのか何なのか……
『さて、イエローマスク、いやゼロワン。いい名前だね、分かりやすい。余り君にとっては嬉しくないことだろうが、アレ以降……君の行方を追っている組織がある。まあ悪い組織じゃない、むしろ正義側だ。君は逃げてしまったから知らないだろうが、キャプテンはカンカンだった。湯気が出てたよ』
「マジで?」
『もちろん冗談だ。だが、君のことを知りたがってるのは間違いない。僕は偶然、君の正体を知ったからね。まだ誰にも言ってないけど』
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