ホッパー・ホームステイ
アイアンマンに問われた、俺はこの力、ゼロワンを使って何をどうしたいのか。はっきり言うが、そんなもんは分かんない。この前のニューヨークみたいなことになったから咄嗟に使ってしまっただけで、これからどうだという具体的なことは全く考えてなかった。ただ一つ、答えられるとすれば……
「俺は、俺のこの力はきっと、何かを守るためにあると……そう思います。誰かを助けたくて手を伸ばした時に、助けを求める手を離さないようにする、そんな力だと。だから、俺はこの力で、誰かを助けたいと、今はそう考えてます」
「……いい答えだ。120点あげよう。J.A.R.V.I.S!花火を打ち上げてやってくれ!」
『はい、トニー様』
「えっ!?どっから!?」
「ああ、J.A.R.V.I.Sは僕が作ったAIだ」
トニーさんの目をまっすぐ見て俺がそう答えると、シリアスだった顔を少し綻ばせてパンと俺の肩を叩いた。するとアイアンマンのスーツから昨日聞いたばかりのジャーヴィスさんの声がしてホログラムの花火が効果音と一緒に撃ちあがった。というかジャーヴィスさんAIだったのか。ゼアとは通じることはできても意思疎通は難しいからこれは凄いと思う。というかスーツが自立して動いてる。これは凄い。
「じゃあ、出発しよう。スーツは持ったか?」
「ここに」
俺はあの時以来肌身離さず持ち歩いているゼロワンドライバーを懐から出して見せる。というか専用のホルダー作ったからね、作ったのは俺じゃなくてゼアだけど。ビームエクイッパー万歳。それを見たトニーさんは興味深そうに片方の眉を上げてドライバーに手を伸ばそうとしたが流石に無防備に渡すわけにはいかないので、さっとしまった。ヒュウ、と口笛を吹いたトニーさんは座ってた椅子から立ち上がる。
「じゃ、行こうか。マリブの海でバカンスだ」
「結局、俺に何をさせたいんですか?」
「何かをしてほしいってわけじゃない。ただ、あの眼帯に渡すには惜しいって思っただけさ」
「???」
結局トニーさんが何を言いたいのか分からなかったけど、立ち上がったトニーさんの後をついて玄関へ……マジでスーツどうするの?え?一緒に車に乗るの?マジで?トニーさんのあとに続いて俺の荷物を持って自律的に歩いていくスーツがいつの間にか止まっていた車の後部座席に収まった。運転席についたトニーさんが助手席を指してくれたので俺も乗り込んでシートベルトをかける。良かった平日の昼間で、ここら辺ベッドタウンだから昼間人いないんだよね、アイアンマン出現で騒がれなくて一安心だ。
道中、トニーさんはよく話しかけてきた。おそらく意図的に俺の持ってるテクノロジーの話は避けて、私生活を中心に……今やってるプロジェクトがどうで、こういうことをやってるんだ、とか恋人?らしいペッパーさんという人の話、まあ惚気とか。いわゆる雑談というやつだ。あとスーツが今後ろにあるやつで17着目だという話とか。一ついくらですか?って好奇心で聞いたらJ.A.R.V.I.Sさんが億単位、円じゃなくてドル換算で教えてくれてマジで腰が抜けかけた。君のスーツはもっとするぞ、と言われて納得しかけてしまったけど。そういえば暫定アイアンマンよりも超技術の塊だったわゼロワンって。
人生初のプライベートジェットで5時間ほどのフライトを体感した俺は、そのままマリブに面したトニー・スタークの豪邸にやってきた。いやマジで豪邸だわ、とんでもない。すっげー家だな、と思いながら上がらせてもらうと中で女性が待っていた、彼女は入ってきたトニーさんを見つけるとため息をついて立ち上がる。
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