12/水星の『魔女』vs御三家の御曹司
「――ブリーフィングを開始します。今回の決闘相手は決闘委員会筆頭グエル・ジェターク、搭乗MSはジェターク社の新型MS、型式番号『MD-0064』ダリルバルデです」
事前に手渡されたタブレットには、見た事のないMSのデータが病的なまでに細かく記載されており――。
「ちょっと待って。何で決闘前なのに相手MSの情報持ってんのよ!?」
「質問の意味が解らないですね、何で決闘前に相手の全情報を入手しておかないのです? やる気あるんですか?」
ミオリネは痛む頭を抑えながら「やる気の問題で解決出来れば苦労しないわよ!?」と怒鳴る。
変態企業として名高い『アナハイム・エレクトロニクス』だが、まさか諜報面に関しても定評があるとは予想外も良い処である。――その真の実態を知れば、ベネリットグループの全企業に諜報員を仕込ませて当然となるのだが。
「当機は第5世代意思拡張AIによって自律行動を行う新型ドローン兵器搭載の実証機と言った処でしょう。近接兵装しか装備してない当たり、実験機としての意味合いが色強い機体でしょうね。……一門でもビームライフル装備させれば良いのに」
「……『アンタ』も、3回以上そんな近接兵装オンリーの『ゲテモノ』で決闘してなかった?」
ジト目で『彼』を睨むものの、「記憶にございませんな!」と下手な腹芸で華麗にスルーされる。
「腐ってもジェターク社の最新鋭MS、近接格闘戦においてはそれなり以上の脅威となります。ですので、決して近寄らず、遠距離から料理すれば良いのですが――」
……言いたい事を何となく理解する。要するに、相手は近接格闘戦しかする気がないという訳だ。つまりは――。
「まぁ此処まで露骨であからさまだと逆に解り易いですね。相手は遠距離攻撃の選択肢を最初から捨ててますので、妨害工作をするとしたら――排熱処理による水散布ですかね? 決闘用のビーム出力では減衰して無力化されますね」
「……それ、普通に反則なんじゃ?」
「いいえ、結果が全てです。決闘に勝利さえすれば如何なる反則も後から自動的に正当化されます。――MSの性能、パイロットの技量のみではなく、バックのサポートも含めてその者の『力』なのです。ジェターク社と事を構えるという事はそういう事ですよ」
なお、手段を選ばずに単体で勝利をもぎ取って意図的に不戦勝として捨ててる『変態』がいるらしい。
「――ですが、どうかご安心を! スレッタ・マーキュリーさん!」
「ひゃいぃぃ!?」
「貴女には『頼もしい花嫁』さんと『アナハイム・エレクトロニクス』が全力でサポートしますので!」
怖がってミオリネの後ろに隠れるスレッタに「あ、推薦企業としても申請しておきましたので、今後とも何卒『アナハイム・エレクトロニクス』社を贔屓に」と、いつもの胡散臭い笑顔で、ミオリネ越しに連絡先の交換を目の前で行いやがった。――呆然とするミオリネを差し置いて!
即座にスレッタの端末を奪って自分の番号も登録しておく。「ミオリネさん!? 勝手に!?」と驚き、「いやぁ、見事な手際で」と意味深に煽る『彼』に苛立つ。どうせ枕詞に『クソ親父』みたいな強引なやり口とかつけているのだろう。
「私はともかく『アンタ』のサポートが一番信用ならないんだけど!? 一体、どういう風の吹き回しよ!?」
そう、『コイツ』は御三家には及ばずとも、勢いだけなら他企業を遥かに凌駕する『アナハイム・エレクトロニクス』社の代表だ。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク