13/スレッタ・マーキュリーvsグエル・ジェターク
「――遠隔操作端末兵器の対処の仕方ねぇ? それを使う『僕』自身に質問するんだぁ」
「……何だよ、好きなだけ笑えよ」
「いいや、その向上心の高さを笑うなんて出来ないよ。人の努力を馬鹿にするヤツは、自分で努力した事の無い人間だからね」
――少し前の事。
グエルと『彼』は共に歩きながら、そんな会話を交わした。
グエルにとっては、煮え滾る内心を必死に我慢し、プライドを捨てる覚悟で問い、『彼』はそんなグエルの反応を楽しむかの如く胡散臭く微笑む。
『ヤツ』の内心はいつも通り全く察せないが、まるで教鞭を振るう先生が如く人差し指を上げて――。
「ビームライフルで撃ち落とす」
「……あんな小さなものを、どうやってだよ?」
「軌道パターンをある程度読んで先に置いておけば良いよ。射撃する時は大体止まるし。本体への牽制も忘れずにやると、どんどんボロを出してくれるよ」
言うは易し、行うは難し。「更に言うなら、その射撃する前の一瞬。撃たれる前に撃つのが最上だね」と、人間卒業検定じみた事を平然と言ってのける。
天才肌過ぎて常人には到底真似出来そうにないが、『先に置く』という概念は、目から鱗だ。可能かどうかはさておき、検討の余地があるだろう。
グエルが無言で噛み砕いているのを見届けてから、『彼』は2つ目の指を上げる。
「ビームサーベルで切り落とす」
「……いや、ビームライフル以上に無理だろ?」
「有機的じゃないドローン兵装相手なら可能じゃないかな? ビームサーベルが届く距離まで接近されているという致命的な問題があるが」
「慣れると楽しいよ?」と、無理難題極まる事を平然と言ってのける。
……『コイツ』なら普段の有機的で千変万化な軌道をするドローン兵器も切り捨てかねない。いや、普通に出来そうで困る。
うんうん唸るグエルを楽しげに見ながら、『彼』は3本目の指を上げる。
「無視して本体を叩く」
「……いや、撃ち落とされるだろ?」
「牽制に構うなんて無駄だから、ある意味では最適解になるかもだよ? 相手に余裕が無くなれば操作が疎かになるしね」
「まぁ本体操作と分かれている自立兵装タイプなら逆効果だけど」と付け加えるが、ちょっと待て。
「――牽制!? あれが!?」
「牽制だよ。一定以上の腕前を持つ相手には通じず、決定打に成り得ないからね」
真顔でそう返される。……いや、もしそれが本当なら、グエルはいつも牽制の段階で撃破されている事になるのだが――。
「まぁ結局は状況次第だから、限られた条件下で自分の取れる最適解を選べって事さ」
「……ちなみに、お前ならどうするんだよ?」
「本体にランダムで牽制入れながら全部撃ち落として丸裸にするよ。それまでに敵MSが無事だったのならば、という話だけど。――『僕』が一番上手く『ファンネル』を使えるんだから、当然だよねぇ?」
つまりは、全部やってのけるというとんでもない話であり――半分以上参考にならなかったが、グエルは目指す頂きの高さを見据え、絶対に超えてやると強く強く誓うのだった。
「兄さん!?」
決闘区域の一部が爆破されて大崩落し、それに巻き込まれるダリルバルデを見て、ジェターク寮の面々――グエル・ジェタークの弟のラウダが悲鳴をあげる。
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