16/『魔女』と緑の閃光
「――あら『先輩』、最近は随分と精力的に動いてお忙しいようで。『花嫁』と『花婿』を同時に侍らせるなんて、良い身分ですねぇ。流石は次期ベネリットグループ総裁は伊達じゃないって事ですかぁ?」
「睡眠時間の確保も出来てないから解決すべき問題だよ、セセリア。流石の『僕』も完徹状態では思考が鈍ってしまうしね」
ふぁ、と大きな欠伸をしながら眠そうに語る『先輩』に対し、「――、ぇ?」と、特大の皮肉で揶揄った筈のセセリアの思考が完全停止する。
勿論、これは経営戦略の一新を強いられ、関係各所への報告・連絡・通達で徹底的に忙殺された事を示しており、決して今、セセリアの思考を埋め尽くしている下世話な事では一切無いのだが――。
「……そ、それで、決闘委員会に何の用で? 『花婿』に告白したグエル先輩でしたら、お父様から直々に決闘禁止令出されて拗ねてますよ?」
「今日、用があるのはグエルじゃないんだよなぁ」
「あら、それじゃもしかして――私に会いに来てくれたんですか、『せ・ん・ぱ・い』?」
どういう訳か、新たな情報を得る毎に一喜一憂し、珍しく非常に大胆なアピールを実行したセセリアの様子に……当然の事ながら『彼』は一切気づいていない。
何処ぞの天才に「ニュータイプの出来損ないが!」と罵られて当然なほどの鈍感と言えばそれまでだが、流石の『彼』も完徹状態は相当堪えているらしく――。
「――やぁ、待たせちゃったかな?」
「いや、時間ぴったりだよ」
「シャディク先輩に――エラン先輩?」
どういう訳か、決闘委員会のラウンジにグループ御三家の二人が現れ、思考が色惚け一色状態だったセセリアも一瞬で察する。
「――魂の代償を天秤(リーブラ)に」
今回の決闘の立会人はシャディク・ゼネリが務め――。
「エラン・ケレス、君はこの決闘に何を賭ける?」
「……『真実』を1つ、語って貰う」
「へぇ、随分と抽象的だねぇ」
まさかまさかの対決カードに、セセリアは驚愕を隠し切れず――。
「『僕』の方はいつも通り。――やってみせろよ、エラン・ケレス」
「これまたいつも通りだねぇ、まぁ本人が良ければ良いけど――」
その文言はグエル先輩との決闘への要求と同じ――実質、何も要求してない――であり、ジェターク社と決裂し、新たな『契約』をペイル社と結んだ――?
「『賽は投げられた(アレア・ヤクタ・エスト)』――決闘を承認する」
「『アナハイム』さんとエランさんが決闘!? どどどどどうして……!?」
「……へぇ、『アイツ』、グエル以外と決闘するんだ――?」
地球寮、リフォームされて一新された最新家電及び家具(揺り籠から戦艦まで、の悪名高き『アナハイム』製)で充実した居間に、慌てふためくスレッタと、何故か居座っている事が突っ込まれないミオリネは物見遊山気分で決闘実況を眺めていた。
「エラン頑張れエラン頑張れエラン頑張れ!」
「え? まさかそっち賭けたの?」
「『アイツ』に賭けても払い戻し確定じゃん――エランが勝つ方に2万! 倍率100倍の超大穴っ、行けー!」
地球寮に所属するメカニック科2年、ニカ・ナナウラは、相変わらず賭け狂いで大穴狙いという破滅的嗜好のオジェロに溜息を吐く。
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