地球よ永遠に
「……ふん、貧弱な奴らだ」
「ですな。我等ディンギルの足元にも及びません。慌てて逃げ帰るとは」
時は少し遡り、地球のディンギル大使館ではルガール・ド・ザールとその部下がその戦闘を観ていた。
目の前のモニターでは、都市帝国を前にして撤退していく地球艦隊が映っており───そして、殿を務めてたった一隻で苛烈な攻撃を防いでいるアンドロメダが映っていた。
「そちらではない」
「……は? 地球では……」
「そちらではない。たった一隻を抜けない奴らの事を言っているのだ」
彼は土星沖会戦の直前の事を思い出す。
その日、山南杏が彼の元を訪れた。要件は勿論、地球側として参戦して欲しい、という物。
地球とディンギル間には安全保障条約は結ばれていない。当然彼は拒否する。そもそも自分達の力を借りなければならない様な者などディンギルと国交を結ぶに相応しくない、と。
そう言った時、彼女は頭を下げた。その表情からはあまり感情は読み取れなかったが、言葉からは何か───まるで、自分達の力を借りなければ地球が滅びてしまう、そんな悲痛な思いが感じ取れた。
だからこそ、彼はこう言ったのだ。
『栄えあるディンギルに相応しい者となれ』
と。
「……あれに、乗っているのか」
最後の一隻がワープし、続けてアンドロメダも撤退準備に移る。都市帝国は逃がすまいとビームを乱射するが、あれ程の大型砲でたった一隻を狙い撃つのは難しかったらしく、彼女は傷一つ無く異空間へ飛び込んだ。
アンドロメダはついに、都市帝国から味方を全て守り切ったのである。
「……ガルンボルストの出撃準備をしろ」
「は……? いっ、一体何をするおつもりで」
「見るだけだ。早急に終わらせろ……私も行く」
───────
────
─
「ガルンボルスト? 確か……」
「ルガール大使の乗艦です」
「ディンギル、か。通信を繋げ」
土方はそう指示を出す。
ヤマトと共に来たのである。何かしらの目的がある筈だった。
『ふ、フン……私はルガール・ド・ザールだ。貧弱な者達め、何をしているのだ』
「ルガール大使!? 何故こんな所に!?」
「……!!」
だが、そのモニターに表示された顔にその場に居た皆が驚愕する。
何しろ───そこに映っていたのは在地ディンギル大使にしてディンギル帝国大神官大総統の長男、ルガール・ド・ザールその人だったのだから。
『状況を見に来てやっただけだ。貴様ら何をしているのだ』
「……見ての通り、我々は戦っているだけだ」
『表面をウロチョロしているだけではないか』
「っ……」
地球におけるディンギル人の最高位。その相手は勿論この場に居る最高位の軍人、土方が対応する事になるのだが基本地球人相手ならば例え相手が大統領だろうと見下す彼の相手を務めるのは中々に彼を苛立たせ、モニターに映らない机の下では握り締めた拳がプルプルと震えていた。
「……戦う気が無いのならば戦場から出て行ってもらいたい。ハッキリ言って邪魔だ」
『……何だと?』
当然、物言いも厳しくなる。土方にはルガールが戦場を知らないボンボンの様に見えていたし、ルガールは彼の事を偉大なるディンギルを見下す不敬な男として敵視する。
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