ハーメルン
旧き世界で貴方と共に
宇宙の流刑地

「ようこそ地球の方々。私はここバース星の総督を務めるヴィルキ・ボローズです」
「初めましてボローズ総督。私は地球連邦より派遣されました全権大使、朝田庄司です」
「私はアンドロメダ副艦長を務める山南杏一等宙尉です。この度の領空侵犯、誠に失礼致しました」
「いえいえ、知識が無いのであれば仕方ありません。何しろ宇宙には明確な印など付けようがありませんからね」
「寛大なお言葉、感謝します」

 地球より約1500光年の位置に存在するバジウド星系、その第四惑星であるバース星の総督府にてその二人は対面していた。しかし、その応接室の中に地球人は丸腰の彼ら二人のみであり、残りは全てバース星側の人間であった。
 口調と表情こそ柔らかいものの部屋の出入口には小銃を持つ兵士二名が固めており、またその他にも兵はおり完全に威圧されていた。

「さて、話をする前にここバース星について少し話さなければいけませんな」

 そう言うと、ボローズは話し始める。
 ここ、バース星は約7年前までは独立国だったらしい。しかし、絶えず諸国家からの侵略の危機に見舞われ、独立を守る為にボラー連邦という国家が救援の手を差し伸べ、現在はその保護国となっているのだという。

「(……とは言っているが、要するにボラーが侵略したって事だろう。要警戒だな……)」

 朝田はそう予想し、そしてそれは的中していた。
 バース星はボラーによって侵略を受け、現在は犯罪者の流刑地となっているのだ。

「さて、我が国ボラー連邦との国交を結びたいとの事ですが……」
「ええ。地球は他の星間国家との関係を殆ど持ちません。この大宇宙で孤立したままで生きていけるとは思っておりませんので」
「その通りです。地球には強大な後ろ盾が必要だ……そう、ボラーの様な」

 にやり、と不敵な笑みを浮かべる。ああ、やはり来た。
 彼は手元の端末を操作し、こちらに差し出す。

「それが我が国が貴国を保護する条件です。ご確認下さい」

 朝田の手がプルプルと震える。それは怒りだろうか、はたまた恐れだろうか。
 総督府の設置、莫大な税金、犯罪者の受け入れ、保有する全技術の共有……そこに書かれていたのは事実上の属国化要求であった。

「……これが条件ですか」
「ええ。これが最低条件です。これまでどの国家も、勿論ここバースも喜んでこの条件を吞んで頂きましたよ」
「そうですか……」

 彼は表面上は冷静を装っていたが、内心はかなり焦っていた。このままでは地球の安全保障どころかどこの誰とも知らない国家の属国のなってしまう。それだけは何としても避けたかった。本音を言えば今すぐにでも逃げ帰りたかったが、彼らが素直に帰らせてくれるだろうか。

「……一度本星に持ち帰ってもよろしいでしょうか?」
「ふむ……しかし、あなたは全権大使なのですよね? 宇宙での外交では一分一秒が重要です。時にはその場での決断も必要ですよ……今の様にね」
「ッ……」

 やはりだ。彼らはこうして数多の国家を従属させてきたのだ。力による従属、ガミラスと同じだ。

「……少し、少しだけ考える時間を頂きたい。地球でではなく、ここでです」
「ええ、それならばよろしいですとも」
「感謝します……少し風に当たってきます。山南一尉はここで少し待機していて下さい」

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