敵出現・地球を改造せよ!
外交による安全保障計画は失敗に終わった。約2か月に及ぶ旅の中、銀河系内部にある星間国家の中で国交を結ぶ事が出来たのはディンギル帝国のみであり、その国とて安全保障条約を結ぶ事は出来なかったのだ。恐らく当たり障りのない物を交易するに留まり、戦争時には大して役に立たないだろう。
加えて、ボラー連邦という超大国と半ば緊張状態に陥ってしまった。連邦側にしてみれば相手の母星は判明しておらず、そもそもゼニー合衆国との戦争があるので自分達に大した損害を与えていない正体不明の国家の事など気にしている暇など無かったのだが、地球側からしてみればいつ相手が襲ってくるか分からないという緊張状態にあった。
しかし、それもあり軍事力を強化する方向性で地球の方針が固まったのは不幸中の幸いというべきか。
「ワープ完了。現在位置、地球より約1200万km……!! か、艦長!!」
「……ああ。あれが……地球だ」
「……」
アンドロメダが地球を出発し帰還する2か月の間に地球の地表面はその殆どが若草で覆われており、かつての赤茶けた地球は無くなっていた。
ワープアウトし、艦橋の窓から見えた地球の姿はかつての青い姿だったのだ。それを目にした瞬間、その場にいた全ての人間がその姿に目を釘付けにされる。山南も笑みを浮かべながら涙を零していた。写真や動画上でしか見る事が出来ないと思っていた景色を生で見る事が出来たのだ。
そうして復活した地球。都市計画に基づいて新たな地球首都になるべきメガロポリスを建設しており、その中心部に建築物用大型3Dプリンターによって短期間で建てられた地球防衛軍司令部にて軍上層部の面々は会議を行っていた。題材は防衛軍艦隊の再編についてである。
「まず、山南杏一尉が提出した『波動砲艦隊構想』についてだが……」
時は少し遡り、アンドロメダが発進してから数週間後。今ここには居ない将校が出発前に提出した計画案を映したタブレット端末を見つつ、参謀長である芹沢虎鉄が話し始める。
山南杏───アンドロメダは、発進前にこの計画案を纏めて藤堂に提出していた。その内容は彼女の元居た世界にて提出された物をこの世界に合う様に改変した物であり、ガトランティス襲来に備えて波動砲搭載艦を数多く建造するという物だった。だが、それに彼らは苦い顔をする。
「完全な実現は難しいと言わざるを得ない」
「ううむ……」
「これは、な……」
彼女はこの世界に合わせたと思っていたが、彼女が思っている程この世界には余裕は無かったのである。
「小型艦を最小限に留め、波動砲搭載艦及び大型艦を中心に数多く建造する……無茶苦茶だ」
彼女の経験したガトランティス戦役。滅びの方舟から無限に吐き出されるカラクルム級に対して小型艦の主砲は全く効果を成さず、撃沈するにはドレッドノート級以上の艦の主砲でなければならなかった。また、そもそも数が圧倒的に多かったが為に主砲など焼け石に水であり、対抗するには拡散波動砲を使用する他なかったのだ。
その為、彼女の計画案の中に波動砲未搭載の艦は存在せず、またフリゲートクラスの艦の建造も通信・索敵機能を高めた特殊艦のみに留めて基本は戦艦を建造する。そして、250mクラスの波動砲搭載戦艦を2202年までに数百隻建造する……など、現状の地球の国力であれば絶対に不可能であろう文が並んでいた。
彼女の居た世界では最終的にドレッドノート級を数万隻は建造したのでこちらの世界でもこの程度は出来るだろうと考えたのだが、国力的にも民主主義国家である地球連邦の構造的にもこれは実現不可能であった。
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