ハーメルン
ホラーエロ漫画の巻き込まれ主人公ですが、陵辱されたくないので魔法少女始めます。
第十五話 魔法少女と悪魔とラスボス



「ちょっと乱暴に行くよ」 

 ココの答えを待たず階段の手すりの上に飛び乗って、下へ向けて駆け抜ける。
 わっ、すごい。できてる。勝手に体がバランスをとって落ちないようになってる。自転車に補助輪をつけてるように安定している。自分の体なのに自分の体じゃない感覚。不安定な足場もアシストしてくれるなんて便利すぎる。

「答えを聞いてから走ってよ! きゃ! は、早い! こわ! もうちょっと遅く、ていうか手加──」

 ココの言葉をかき消す轟音、遅れてやってきて体を打つ衝撃波。上で何かが起こっている。

「──いやもっと早く!! 来てる!! 落ちてきてる(・・・・・・)!!」

 暗い影が私たちを覆ったのに、私も上に視線を向けて、

「え、嘘」

 足は止めていない。自動操縦されているみたいに走りながら上から来るものにぽかんと口を開けてしまう。
 もうもうと上がる白煙を引き裂いて落ちてきているものがあった。
 ゾンビだ。大きいゾンビが降ってきている。大きいゾンビといっても無数のゾンビが寄り集まってるできたゾンビの塊。ゾンビが手と手、手と足を互いに繋いで作った球体だ。

「大きいにもほどがあるよ!?」

 大穴を埋め尽くすほどに巨大だった。どこからこんな質量が──と何気なく階段の方を見るとゾンビがすごい勢いで上の方に引きずられていっていた。供給先は、あのゾンビだよね。間違いなく。
 一つ疑問が解決した。

「ええっと……なんだろうあれ」

「どうやらあれがこの空間を作っている魔物だな」

「あの巨大なゾンビが?」

「総じて見ればそうだが、どうやら核になっているものがある。ああ、あの真ん中に生えているのだな」

「……どれ?」

 いっぱい集まりすぎてどれか分からない。首を傾げているとバックルから離れたベリアルが顔の横にやってきて、指を指した。分からない。
 あれって言われても……。とベリアルに視線で伝えた。

「白衣を着ているのだ。ほら」

「あれって……」

「さっき私が撃ったやつじゃない?」

 丁度、階段を降りた時、私に襲ってきた上の病院の医院長だ。その人がゾンビ球体から生えている。し、しつこい。でもちゃんと頭を撃ったのになんで……。

「あ、そっか。あれがラスボスなんだ」

「なるほど。倒した後、安心しきった背中を……的な感じね」

 腑に落ちたと腕の中から聞こえたココの言葉に、ベリアルが補足する。

「うむ。先程の大群で殺しきれなかった際の処置だな。用意周到だ。このゲームに入った瞬間からここまでのシナリオを定めていたのだろう」

「撒き餌に引っかかってことかあ。嫌になるね」

「私のせいで……いや魔物が悪いよ」

「だよね。やっぱそうだよね。うん、魔物が悪い」
 
 それならやることは決まってる。走り続けた先、階段の終点。そこには円形の広場とどこかへ続くトンネル、そこへ続く列車の居ない線路があった。

「この階段何だったと思う?」

「……プレイヤーを殺すための階段?」

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