ハーメルン
某妖怪「超有名冒険譚の主人公が目の前にいるんやが」
2
正直いって、ガネラという妖怪は存在していない、空想のイキモノであるというのが、妖怪の間では当たり前の認識だった。
だって考えてもみてほしい。
この伝記が書かれたのは1000年は前のことで、この伝記以外にガネラの証拠は無いのである。
作者が「いる」と答えているのが、唯一、夢を持たせられる言葉だった。
だから、目の前のおぞましくて恐ろしい妖気を漂わせる少女のような姿の妖怪が名前を名乗った時。
ウィスパーは恐怖と喜びと困惑で頭がおかしくなってしまったし、その衝撃で気絶してしまった。
さて、この気絶。
実は会えた喜びも然ることながら、妖気によるものが大きかったりする。
というのも、この妖怪─ガネラが漂わせる妖気があまりに恐ろしいのだ。
どう恐ろしいのかと言えば、おぞましいとも、気持ち悪いとも言える壮絶なもの。
ケータがおおもりやまへ向かう最中に妖怪を見かけなかったのは、この妖気に妖怪たちが恐れをなして逃げ出したからだった。
またもや話は変わるが、ケータは妖怪の友達が多い。
妖怪ウォッチを自称執事ことウィスパーに渡され、ジバニャンなる赤毛の化け猫と友達になった夏休みの間に、ウィスパーの用意した妖怪辞典─名の通り妖怪の辞典である─に載る妖怪たちほぼ全てと友達になっている。
このケータが住む桜ニュータウンなんかは顕著で、友達妖怪は数多く居た。
そんなケータの家から発せられる、おぞましい妖気。
友達とは、友達を心配する生き物だ。
「ケータ大丈夫?」
「本当に怪我とかしてねえか?」
「許せねえ…俺の友達に変なことしやがって!」
「だ、大丈夫だよ!なんもされてない…っていうか、俺全然気づかなかったし!」
ケータの家には大勢の友達妖怪が集まっていた。
ガネラが家にやってきてから未だ1時間しか経っていない。1時間の内にこの有様だった。
低ランクはEから、高ランクはSまでの妖怪が立ち寄りケータを心配してやってきたのである。
──絶っっ対に、ガネラが居ることは隠し通すでウィス!
ケータはウィスパーにそう言われたことを思い出しながら、必死に誤魔化し隠していた。
心配してくれるのは嬉しいが今ではない。
再三言うがガネラという妖怪は、妖怪の間ではとんでもない有名人である。ガネラが出現したとなればとんでもない事になるし、何より本妖怪が目立ちたくない様子だったので、ケータはこんなしんどい思いをしている。
特にケータは、ガネラがそんなにヤベエ存在だとは知らないので、疲労感は倍増していた。
「なにかあったら私を呼んでくださいね!」
「うん、ありがとうふぶき姫」
ドロンと帰って行ったふぶき姫に内心安堵のため息をついて、ケータはチラリと隣を見やった。
妖怪は強い縦社会で構成されている。
弱い妖怪のランクは低く、強い妖怪のランクは高い。よって、高いランク…Sランクの妖怪の数は少なく、当たり前のようにプライドも高く、気難しいことが多い。
ふぶき姫もSランクの妖怪であり、ついさっきまでやって来ていたブシニャンもそうだった。
Sランクはランクが高いだけあって誤魔化すのが大変であった。
今回、特にSランク(面倒くさいの)筆頭妖怪がいる。
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