学級委員と不穏な気配
あの後、教室で皆がしていた反省会に参加した。
緑谷くんも教室に戻ってきたけど、私が来た頃には既にいなかった爆豪くんを追いかけていってしまった。
そこまではよかった。
だけど、教室に居ても校門は普通に感知範囲内なのだ。
『人から授かった"個性"なんだ』じゃないんだよ。
これは明らかにオールマイトが私に伏せた内容じゃないか。
オールマイトの思考と緑谷くんの発言を組み合わせると、つまり緑谷くんはオールマイトの個性を譲り受けた弟子ってことだ。
限界が近いオールマイトが雄英に来たのも後進、というより緑谷くんを育成するためじゃないか。
なんで正体を看破した私にすら伏せた内容を、あんな誰に聞かれるかも分からないところで暴露してるんだ。
私は治安が悪くなった時の悪影響を考えたくないから誰かに話すつもりはないけど、緑谷くんの口が軽すぎる。
ちょっと心配になってきた。
うっかりなんかでお姉ちゃんの生活に影響が出るのは許容できない。
できる範囲でばれないようにサポートしてあげるか……
そんな決意をした数日後、オールマイトが雄英の教師になったことが新聞に載った。
そのせいか校門近くにはマスコミがたむろしている。
一緒に登校していた知名度のあるお姉ちゃんを見つけた記者たちが、私たちの方に走ってきてマイクを向けてきた。
「あ、ヒーロー科の!ネジレちゃんですよね!教師としてのオールマイトに関して一言!」
「んー気になるところばかり!不思議!って感じ」
マイクを持って迫ってくる記者にも、お姉ちゃんはニコニコと慣れた様子で答えている。
いつも通りの天然さんなコメントに私もニコニコだ。
「じゃあ今度はそっちの子!オールマイトの授業はどうですか!?」
お姉ちゃんへのインタビューもそこそこに、今度は私にもマイクを向けてきた。
私のオールマイトへの感想は新米教師って感じでしかないけど、それを言うのは流石に頑張ってるオールマイトが可哀そうだ。
そう考えた結果、適当にあしらうことにした。
「ん……不思議って……感じ……」
言い切ったというかのように目を閉じて頷くと、記者は不満ではあるみたいだけどよしとしたらしい。
私たちから離れて次の生徒を追いかけ回し始めた。
そんな感じでその後も何度か記者にインタビューされながら校門を抜けた。
そしてホームルームの時間になった。
「さてホームルームの本題だ……急で悪いが今日は君らに……」
相澤先生は来て早々に爆豪くんと緑谷くんに注意、というか釘刺しをした後、溜めを作るかのように話し始めた。
私は思考を読んでこの後何を言われるのか理解している。
だけど個性把握テストの時を思い出してしまうような先生の様子に、皆は『また臨時テスト!?』とか警戒していた。
こういう思考がシンクロするところは、皆仲がいいなと思う。
「学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たー-!!!」」」
内容を知ったとたん皆安心したような感情に支配されるとともに、一気に興奮し始めた。
「委員長!!やりたいですソレ俺!!」
「ウチもやりたいス」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」
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