迫る体育祭
翌日は臨時休校になった。
あれから、私も色々考えた。
私は、今までほとんど運動をしてこなかった。
理由なんて簡単で、友達なんていなかったから、一人で出来る趣味に走っていたのだ。
読書やゲームは相手の思考を読まないで済むから素直に楽しめたし、料理を作ったりしてお姉ちゃんに褒めてもらったりするのが好きだったから。
雄英高校を受験すると決めても、個性で何とかするなんて驕っていた私は、特にトレーニングもしてなかった。
その結果が、あの個性把握テスト。
個性を使わなければ、女子の平均程度しか取れない運動能力だった。
その頼りの個性すらも、身体能力の強化という点で見ると瞬間的に使うことが出来る程度でしかない。
ちゃんと自主トレをして備えてきた他の皆に後れを取るのは、当然のことだった。
そのツケが回ってきたんだろう。
だからこそ、あんな危機的状況に陥ってる時に足手まといにしかならなかった。
索敵しか能がない、戦闘能力のないヒーローが現場にいても不安要素になるだけなんだ。
今回の件で、そのことを強く実感した。
今後お姉ちゃんの足手まといにならないためにも、身体を鍛えるべきだ。
武術とか体術を身に着けてみるのもいいかもしれない。
それがあれば波動の強化はさらに効果的になるはずだ。
でも、こういうのは闇雲にやっても効率が悪いと思う。
身近で相談しやすい人と言えば……
やっぱりお姉ちゃんか。
お姉ちゃんは今雄英のビッグ3なんて呼ばれる雄英生のトップなのだ。
相談しない手はない。
「身体を鍛えたい?急にどうしたの?」
「その……思うところがあって……体術とか……覚えたい……」
「うーん……」
最初は不思議そうにしていたお姉ちゃんだったけど、私の表情を見たら大体察してくれたみたいだった。
流石お姉ちゃん。察しもいい。
少し考えた後、お姉ちゃんが口を開いた。
「体術を覚えるのはいいと思うよ。でも、そのためにはまず基礎が大事なんだよ。知ってた?」
「えっと……つまり……」
「小手先の技術を覚える前に、走り込みと筋トレしよ!ね!」
結局、基礎体力を向上させないとどうにもならないってことみたいだった。
「いきなり体術っていうのはムズかしいよ」
「ん……それは……そうかもしれないけど……」
「焦りすぎ!瑠璃ちゃんはまだ1年生なんだし、これからゆっくり色んな経験を積んでいけばきっと大丈夫!」
頭を撫でてくるお姉ちゃんに、何も言えなくなってしまう。
でも、お姉ちゃんの言ってることは間違ってない。
足手まといにならないためにも、走るのが嫌いだとか言っている場合じゃないか。
「……分かった……ランニング……頑張る……」
「うんうん!じゃあ瑠璃ちゃんに合ったトレーニングメニュー、一緒に考えよっか!」
そう提案してくれたお姉ちゃんと相談して、最終的に毎日のランニングと筋トレから始めることになった。
明日からなんて言わずに、ちゃんと今日から始める。
ランニングの時点で心が折れそうになったけど、こういうのは積み重ねが大事だっていうのは分かる。
頑張ろう。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/4
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク