救助訓練
体育祭の開催を告げられた2日後、私たちは再びUSJに来ていた。
「まああんなことはあったけど、授業は授業。というわけで救助訓練、しっかり行ってまいりましょう」
コスチューム姿の13号先生が、人差し指を立てて小首を傾げるような仕草をして話し始めた。
包帯ぐるぐる巻きのままの相澤先生もいる。
2人とも無理しすぎじゃないだろうか。
「13号先生、もう大丈夫なんですか?」
先生のファンのお茶子ちゃんも、心底心配した様子で問いかけている。
「背中がちょっと捲れただけさ。先輩に比べたら大したものじゃないよ」
「授業を行えるなら何でもいい。とにかく早く始めるぞ。時間がもったいない」
13号先生が相澤先生の方を示しながら、自分は大したことはないと嘯く。
背中に大きな傷跡が残ってもおかしくないレベルの捲れ方だったと思うんだけど……
相澤先生もさっさと授業を始めようと歩き出してるし、なんでこんなに普通にしていられるんだろう。
「相澤先生!前回は13号先生と相澤先生、あとオールマイトが見てくれるはずでしたけど、オールマイトは……?」
「知らん。ほっとけあんな男」
相澤先生は緑谷くんの質問に少し足を止めたけど、素っ気なく突き放して再び歩きだしてしまった。
その様子を見て、昨日のことを思い出しながら相澤先生の後ろについて訓練場所に向かった。
昨日の放課後――――
そろそろ帰ろうかと準備をしていた頃、突然オールマイトに呼び出された。
休憩室で骸骨姿のオールマイトの正面に座って話を切り出される。
「急に呼び出してすまないね、波動少女」
「いえ……それは大丈夫ですけど……」
なんの用だろうと思いながら淹れてくれたお茶を飲む。
オールマイトも自分のお茶を一口飲んでから話し始めた。
「明日の授業なんだが、ちょっと協力して欲しいことがあってね」
つまるところ、オールマイトの話はこうだ。
明日のヒーロー基礎学の授業は、あの日襲撃されてできなかった内容をUSJで行うらしい。
その中で、オールマイトがヴィランに扮してサプライズを仕掛けるつもりなのだそうだ。
私が生徒側に居ても波動でオールマイトであることを看破しちゃうから、人質役になって欲しいらしい。
「サプライズ……それ……本当に必要ですか……?皆……十分怖い思い……したと思いますけど……」
「彼らはあの襲撃を事故だと思っている。何千、何万分の一の確率で起こった偶然だと。しかしそうではない。ヒーローには絶えず危険が付きまとう。それを自覚して欲しいのさ」
「そのこと……相澤先生は……?」
「賛同は得られなかったけど、承認はしてもらったよ」
悪意も無ければ思考とのズレもないし、オールマイトが嘘をついてる様子はない。
だけど、理由を聞いてもそんなことをする必要はないんじゃないかと思ってしまう。
皆、あの事件を真剣に受け止めて、今後につなげようとしていた。甘く見ている生徒はいないと思うんだけど。
とはいえ、新米とはいっても相手は教師だ。授業のために必要だと言われれば拒否するつもりはない。
「……人質役は……分かりました……でも……私はどうすれば……?」
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