雄英体育祭 第一種目
2週間はあっという間に過ぎて、雄英体育祭当日になった。
私たちは体操服に着替えて、控え室で待機していた。
「皆準備はできているか!?もうじき入場だ!!」
飯田くんが張り切って声掛けをしているけど、誰も反応しない。なんか、空回りする飯田くんをスルーするのが当たり前になってきてるな。
「コスチューム着たかったなー」
「公平を期すために着用不可なんだよ」
そんな空回る飯田くんを尻目に、三奈ちゃんと尾白くんがコスチュームに関して話していた。
着たいのは分かるけど、ヒーロー科以外コスチュームなんて持っていないんだから仕方ない。
「私はまだコスチューム戻ってきてないからラッキーかな!」
「あと……一週間くらいだっけ……?」
「そうそう!少し前に繊維出来たって連絡来たし、もう少しで出来ちゃうんだよ!!」
透ちゃんがまだ見ぬコスチュームに胸を弾ませながら、ニコニコと笑顔を浮かべている。
デザインもいい感じのが出来たし、私も楽しみだ。
皆思い思いの方法で過ごしている中、轟くんが緊張でガチガチになっている緑谷くんに近づいていった。
珍しい組み合わせに、皆各々で話しながらチラチラと様子を伺っている。
「緑谷」
「轟くん……何?」
「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」
……いきなりすぎる宣言ではあるけど、轟くんは客観的に見てもクラストップの実力者だから、この自信も頷けてしまう。
それだけ圧倒的な実力差があるのは、もう骨身に染みて分かってる。
「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが……お前には勝つぞ」
轟くんの宣戦布告を受けて、緑谷くんが少しびっくりしたような表情を浮かべた。
緑谷くんの虚をつかれた時の咄嗟の反応が成長していることに、少しだけ安心する。
この前もオールマイトと一緒にお昼を食べていたみたいだし、あれだけ露骨に贔屓されてるんだからこれくらい堂々としていた方がいいのは確かだ。
「おお!?クラス最強が宣戦布告!!?」
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって……」
轟くんの発言に上鳴くんが反応して、切島くんが止めに入る。
だけど、私はこういうのもありだと思う。
ヒーロー科にとっての体育祭は、友達との馴れ合いをしながらやるようなものじゃない。
今後のインターン先とかがかかった、将来に直結する戦いなんだから。
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのかは……分かんないけど……そりゃ君の方が上だよ……実力なんて大半の人に敵わないと思う……客観的に見ても……」
「緑谷もそーゆーネガティブなこと言わねぇ方が……」
切島くんが緑谷くんを止めに入るけど、ちゃんと最後まで聞くべきだ。
彼の決意は、ネガティブなものなんかじゃない。
「でも……!!皆……他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって……遅れを取るわけにはいかないんだ。僕も本気で獲りに行く!」
「……おお」
緑谷くんのその決意表明に、皆息を呑んでいた。
内心まで見えてる私は、オールマイトの後継者としての重圧とヒーローへの憧れを思い浮かべながらのその宣言に、不覚にもちょっとかっこいいと思ってしまった。
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