雄英体育祭 第一種目
それくらい今の緑谷くんには貫禄があった。
「……緑谷くん、熱いね!」
「ん……そうだね……」
透ちゃんが緑谷くんへの感想を口にしながら、真剣な表情で私を見つめてくる。
透ちゃんも、今の緑谷くんの言葉に思うところがあったみたいだった。
「ねえ瑠璃ちゃん……体育祭の競技中は、全力の真剣勝負、しようね!」
「ん……競技中の馴れ合いは……なし……」
お互いに頷きあって、そう約束する。そのタイミングで、飯田くんが声を張り上げた。
「皆、そろそろ時間だ!スムーズに入場できるよう、整列しておこう!!」
もう開会式の時間が迫っていた。
『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた新星!!!ヒーロー科!!1年!!!A組だろおお!!?』
アナウンスに合わせて、ゲートから入場する。
その瞬間、客席から爆音のような歓声が上がって、多くのフラッシュが焚かれた。
テレビで見て知ってはいたけど、相変わらずすごい数の観客だ。
普通にしていると入試の時のように騒音で酷いことになるのは分かりきってるから、透ちゃんの思考を集中して読むことで気を逸らす。
こういう時、信頼できる人がいると安心だ。
知らない人でもないから不意に不愉快な感情とか思考を読むこともないし、騒音にも悩まされない。
代わりに透ちゃんが考えていることをほとんど読み取っちゃうけど、透ちゃんなら何の心配もない。
普段から裏表がないし、今も緊張しつつ張り切ってるくらいで変な思考を抱いたりもしてないし。
「凄い!満員!ちょっと緊張しちゃうね!」
「ん……そうだね……」
透ちゃんが緊張を振り払うかのようにテンション高めに話しかけてくる。
私はあまり緊張していないけど、一応同意はしておく。
『B組に続いて普通科C・D・E組……!!サポート科F・G・H組もきたぞー!そして経営科……』
その後もアナウンスに合わせて普通科、サポート科、経営科も順番に入場して整列した。
「選手宣誓!!」
ミッドナイト先生が宣言しながら鞭をピシャンと鳴らした。
相変わらずすごい衣装だ。
その衣装は規制されてなお18禁ヒーローの名に相応しく、身体のラインを惜しげもなく晒け出している。私には絶対に真似できない。
「選手代表!!1-A、爆豪勝己!!」
「え~~~かっちゃんなの!?」
「ん……彼……入試一位だし……当然……」
緑谷くんがビックリしているけど、彼が首席なんだし当然だろう。
そんな私の言葉に対して、普通科の方から不愉快な感情と思考が流れてくる。
『劣等感』、『嫉妬』、『不快感』、『面倒くさい』
そんな負の感情ばっかり垂れ流されたら、こっちも気分を悪くなる。
「ヒーロー科の入試な」
しかもわざわざ普通科の方から強調までして文句を垂れてきた。
劣等感を感じるのは自由だけど、雄英体育祭なんて毎年やってるイベントなのに、今更こんなことで文句を言ってこっちを不快にしないでほしい。
「学校で一番偏差値が高い学部の……入試一位が代表……何かおかしなことある……?……劣等感で文句言われるの……不愉快……」
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