ハーメルン
波動使いのヒーローアカデミア
戦闘訓練(後)

そして、訓練が始まった。

すぐにビル全域を透視しつつ1階入り口の方の波動を集中的に感知する。
轟くんが入口近くの廊下を歩いていて、障子くんが入口の方に向かってる……?
轟くんの思考は……『ビルを凍らせる』、『危ないから出とけ』……?
彼の身体の波動、その右側だけが揺らぐ。
それと同時に、周囲の壁が凍り始めてる!?
まずい!!

「透ちゃん……私が合図したら全力でジャンプしてっ……!!」

「え?え?どういうこと!?」

「いいからっ!」

もう3階の天井まで氷が迫ってる。
時間がない。

「今っ!!!」

「は、はい!!」

透ちゃんと2人で飛び上がる。
その瞬間、部屋の中が足元から一気に氷に包まれた。
ジャンプして浮いてた私と透ちゃんは大丈夫だったけど、核は凍り付いちゃってもう動かせそうにない。

「つめたっ!?凍っちゃったよ!?これ轟くん!?」

「ん……そう……轟くんの周囲から……壁が凍り始めたのが見えたから……怒鳴ってごめんね……」

「そんなのいいよ!瑠璃ちゃんが教えてくれなかったらこれだけで動けなくなるところだった!」

透ちゃんが脱いでいたブーツと手袋も凍ってしまっていた。
足が冷たそうだけど、我慢してもらうしかなさそうだ。

「透ちゃん……足、冷たいと思うけど我慢できそう……?私……スーツもあるからブーツ貸そうか…?」

「大丈夫!ブーツも、瑠璃ちゃんが履いといて!」

思考からして、私のブーツを履いたら私が冷たい思いをすることになるってことと、透明である利点が薄れるのが嫌らしい。
大丈夫っていうのもやせ我慢っぽいけど、本人が大丈夫っていうなら信じよう。

「そっか……氷、尖ってる所とかもあるから……気を付けてね……」

「ありがと!気を付ける!」

透ちゃんの返答を聞いてから、もう一度ヒーローチームの方に集中する。
障子くんが轟くんに通信機で話しかけてる?
思考は……『2人とも動いている』『4階の北側の広間にいるのは変わってない』
これ、障子くんも感知できてる。
しかも場所の詳細までバレてる。波動の形を見る限り腕には耳が付いてる。
音で聞き分けてそうだ。
透ちゃんの耳元に顔を近づけて囁くように話しかける。

「透ちゃん……動きを見る限り……私たちが凍ってないのも……ここにいるのもバレてる……」

「え!?」

「障子くんの腕に……耳がついてる……多分音で聞き分けてるんだと思う……潜伏するときは……音を立てないようにしないとだめ……」

「そ、そっか。じゃあ話すのも小さい声にした方が良さそうだね」

すぐに意図を察して、透ちゃんも小声で返事をしてくれる。

「場所はバレてるけど……良い点もある……凍らせるときに障子くんを1回外に出したおかげで……轟くんが突出してる……合流もしてない……ここで透ちゃんが気配を消して潜伏できれば……障子くんも慎重にならざるを得ないと思う……」

「そうだね!じゃあ私が本気出しちゃうよ!」

障子くんは建物が凍ってるせいか慎重に歩いているのに対して、轟くんは普通に歩いてここに向かってる。
合流しようとしない限り同時に来るなんてことはない。

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