ハーメルン
【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話
第13話 馬背神社祇園祭(2)

馬背神社は本殿が裏山を少し上った所にあり現実の馬背神社は東宮と西宮の二つがあるが、本作では省略して一つだけにしている、社務所は山を下りた地元の公民館に併設されている。
そのため普段の神社は無人であり、小学生が山遊びのついでに境内で休んでいるか、大晦日から初日の出までの二年参りのときに焚火を監視する人がいるか、人がいるとしたらその程度である。今日は祇園祭(子供の部)なので子供がいるはずもなく、ここで里を一望しながらゆっくり日が傾くのを待つつもりだ。
今日は神社のお祭りだからなのか、注連縄にぶら下げられた紙垂(しで)が新しくなっている。それに気づいたことにちょっと嬉しくなりながら、以前と同じようにお神酒をお供えする。以前の100円チョイで買える180ml紙パック清酒でなく、今回は奮発して1500円くらいの720ml四合瓶清酒だ(奮発と言うほどでもない)。
<ヒメ>と並んで二礼二拍手一礼。

『三月に出ていくと挨拶しましたが出戻りました、明日お神輿を担がせて頂きますがよろしくお願いします。それから無事覚醒できました、これも神様のおかげでしょうか、ありがとうございます。できれば<ヒメ>が人外とばれずに何事もなく終わりますように』

内心で適当に(この場合はアバウトにという意味で)報告と簡素な祈りを込め、下げていた頭を上げる。
神前から下がるついでに、以前に見つけたこの神社の異界を検分する。

「あれ、前より結界の綻びが大きいような気がするな。<ヒメ>は何かわかる?」

常人が見れば何もないところでしゃがみ込んで首をかしげる。前回は応急手当としてないよりまし程度の補修をしたはずだが、それは跡形もなくなっている。緊急ではないが、以前より注意ランクを一つ上げた方が良さそうだ。

「ほう、それを見抜くとは、此度の氏子は優秀だの」
「?! 誰だ?!」

<ヒメ>が<ヒメ>ではない。表情も声音も仕草も、<ヒメ>のはずなのにまったく違う。

「そう警戒するでない、(われ)は馬背神なるぞ」
「げぇーーっ?!」

ショタオジ、高級式神はハッキング対策ばっちりって言ったじゃないですかーっ! 乗っ取られているんですけど?!

「案ずるでない、其方の式にいっとき憑依しているのみ。吾の氏子が使役している式といえど、(えにし)をたぐるは難い」
「つまり、俺が式神(カワ○ミプリ○セス)を馬の擬人化と強く意識しているから、その認識に乗って馬背神の分霊に見立て、一時的に本霊干渉をしていると?」
「其方に分かりやすい表現ならそうなる。さらに言えば、其方がこの式を何とかしてくれと吾に願ったからこそ成立している」

あっ、これ源氏ニキの式神<ライコー>が源頼光と本霊通信したのと同じパターンか?

「そう警戒するでない。吾が忌々しい天使どもに封印され、才ある氏子たちが根切りされて以来、還暦ぶりの見込み有る氏子。別に取って食ったりせぬ」

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