第18話 馬背神社異界攻略・伝承再現
「山中歩き詰めでさぞ疲れたであろう、まずは持て成してやろうぞ。酒でも飲んで喉を潤すが好い── 『夢ばし覚まし給ふなよ』」
「【パトラ】!」
間一髪、【ドルミナー】を弾いたのは幾度となく使ってこの身に染み付いた状態異常対策スキルだった。
「くそっ、<ヒメ>は前に出てタンク、<アグネス>はデビルポイズンとデビルスリープ、出し惜しみなし!」
馬背神(分霊)は戦力として当てにならないし、連携訓練もしたことないので指示は無し。
「我が名は平田維茂! 平維茂に代わり、お命頂戴いたす!」
どこかで読んだ時代劇小説の一部を使った下手くそな名乗りを上げると、鬼女紅葉は牡丹の大輪のような顔から一変、般若になった。
*
サイゲームスの二次創作ガイドラインに従い、暴力的シーンはカット。
<ヒメ>の活躍シーンは各自で脳内補完していただくようお願いします。
*
「勝った……」
【鬼女紅葉】の主な攻撃手段は物理、マハラギ、ディア、ドルミナー。俺と<ヒメ>はどちらも攻撃耐性と精神異常対策があるし、また鬼女紅葉は物理耐性、破魔弱点なので物理攻撃主体のこちらもダメージを与えづらいのだが、北向観音の加護を得た破魔武器が特攻となり、Lv20 vs Lv13&10という戦いを辛くも勝利できた。
なお<アグネス>は早々にマハラギで焼かれてHPが危険水域に入ったので、戦力外通告して装身具に戻した。やはりLv6ではLv20を相手にするのは無理だった。
「おのれ、またしても、またしても──」
倒れ伏した鬼女紅葉が苦悶の表情で呪いの言葉を吐こうとしたが、馬の姿の馬背神(分霊)が鬼女紅葉を踏みつぶして終わらせた。
「勝つのは<ヒメ>、当然の結果ですわーーーっ!!」
<ヒメ>が勝利の雄たけびを挙げている。なお残念ながらスキルではない。
俺は疲労でその場にへたり込み、装身具に戻した<アグネス>を再び出すのが精いっぱい。
「ブルッブルルッ」
馬背神(分霊)は鬼女紅葉の遺骸を丁寧に踏み砕き、マグネタイトに戻して吸収している。
俺はそれをぼんやり見ながら、異界ボス攻略の試練を達成したことにようやく実感が湧いてきた。
「ああ、勝てたんだな──」
「うむ、よくぞ試練を乗り越えた、平田維茂。我が氏子よ」
いつぞやのように馬背神が<ヒメ>に憑依して発言しているなと思いながら視線を向けると、<ヒメ>が鞍も手綱もない裸馬に騎乗している。おいおい、同じ分霊同士で人馬一体状態かよ。いや、接触することで分霊同士の通信負荷を低くするとか理由があるのだろうけど、騎乗する必要あるのか。
「其方には褒美をやろう」
「あ、ありがとうございます」
褒美か。絵に描いた餅になるからと今まで具体的に何かを貰うと意識したことなかったんだよな。しかし、馬の権能を持つ馬背神から頂けるとなると── 馬、馬ねぇ。人よりも速く移動できて大量に荷物を運べる── ああ、そうか。
俺は【トラポート】を覚えた! <ヒメ>は【勝利の小息吹】を覚えた!
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