ハーメルン
【カオ転三次】マイナー地方神と契約した男の話
第2話 覚醒後の第一歩

自身が覚醒してどのスキルを得たのかというと、【パトラ】だった。

「補助系スキルってことは、俺には戦う素質がないってことですかね?」
「そんなことないよ、少なくともLv10くらいまで上げないと成長傾向は見えてこない」

ドクオニキは俺の疑問をきっぱり否定した。

「それにパトラだって悪くない。技術部で勉強してアイテム作成できるようになれば手堅く売れる」
「そうなんですか?」
「パトラの効果を持つアイテムは【イワクラの水】という名だったかな? 悪魔との戦闘で使うだけでなく、カフェインレスの眠気覚ましドリンクとしても一定の需要がある。技術部とかは喜ぶ」
「おっ、それを聞いてやる気が出てきました!」
「アイテム製造班に行くにしろ、レベルはある程度上げておいた方が良い。スタンクニキが最初のパワーレベリングを面倒見てくれると言ってたから、それに甘えたらどうかな?」
「ありがとうございます!」

後から振り返ると、あのときのドクオニキは出荷される豚を見るような顔だったかもしれない。
覚醒したことに浮かれていた俺は、全く気付かなかったのだが。

*

「じゃ、異界探索の基礎の基礎を教えるぞ。星霊神社には初心者向けの異界がある、というかショタオジに感謝しろよ、ここまで初心者に配慮してある異界なんておそらく世界でも唯一だ」
「ショタオジ、ありがとうございます!」

スタンクニキに引率されてダンジョンに潜る。
手にした獲物はソニックナイフ、未覚醒時に【異界発生地周辺の探索】のアルバイトで稼いだ報酬をガチャにつぎ込んで入手したものだ。転生者は覚醒後ならデモニカはむしろ邪魔ということで着用しておらず、防具も今回は不要とスタンクニキが言うのでそれに従った。
【仲魔】もなし。転生者用高級式神は発注したが納品は半年後で、それまではレンタル式神でやり繰りするところだが、今回はスタンクニキという引率がいるのでレンタルも無し。今回のパワーレベリングでLv3~4まで上がれば【アガシオン】を入手できるようになるから、それで手数を確保できるという見立てだ。

「ダンジョンの入り口だと、出現する敵は自衛隊ブートキャンプで入った地下下水道と大差ありませんね。光源や臭いなどの快適性は大きく違いますが」

出てくる敵はLv1未満の【外道スライム】や【悪霊ディブク】がせいぜいで、これはソニックナイフを振り回せばあっさり消滅する。
もう少し先へ進むとLv1になったスライムやディブクが出てくるが、未覚醒状態であればともかく、これも覚醒済みの俺の敵ではない。

「ぶっちゃけ、この程度であれば余裕ですね」
「そうだろうな。では、もうちょい強め、君の【パトラ】の出番がある敵に会いに行こうか」

スタンクニキはそう言うと歩き始め、俺は慌ててその後を付いていった。

*

ダンジョンの雰囲気が変わったような気がする。しかしスタンクニキは何も言わない。
何かを言わないといけないのではないか、そう気持ちが焦れた瞬間に、俺は不意打ちを受けた。

「ぁ痛っ?!」
「【地霊ノッカー】、今の君では格上の相手だ、頑張れ」

ノッカーの振り回した木槌が脛にヒットし、体勢を崩した俺に追撃の影が迫る。

「ノッカー複数の不意打ちか、これは厳しい」
「呑気なこと言ってないで、助け……」

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