ハーメルン
東方化物脳 Re:make
永琳の苦労 Ⅱ 『能力』

 あれから、私と零は恋人という関係となった。だから、彼とイチャイチャしたり、大人っぽいことをしたり、そんな想像をこの天才の頭脳で行っていたのだけれど…

「永琳、そこの薬取ってくれ」

 そんなことは一切無かった。全てが今まで通りだった。拍子抜けだった。いや、まぁ、良いんだけどさ。もう少しラブラブとしたイベントがあっても良いのではないのかなと思うのだけれど…

「永琳?どうした?」
「え!?あ、なに?」
「いや、だからそこの薬取ってくれ。」

 こんな風に、彼は今までのように私の手伝いをしている。余計な事は一切していない。まぁ、なんて素晴らしい助手なのでしょう。今までのサボりをこんなに願う日が来ると思わなかった。

「分かったわ。これかしら。」
「ん、ありがとう。」
「どういたしまして…」

 もう諦めたほうが良さそうだ。まぁ、仕事と私情を混ぜないのは本当に良いことではあるし、このまま仕事を終わらせるとしよう。
 頑張ろうと気合を入れた所に、部下が慌てた様子で部屋のドアを激しい勢いで開けた。

「八意様、神田様!妖怪が数匹、都を襲っています!」
「なんですって!?」
「知ってる。」
「え?」

 知ってる?冷静に薬品を調合しながら「当たり前でしょ?」とでも言うように興味なく彼は呟いた。

「なんで知ってるの?」
「匂いと波形で分かった」

 私の鼻には薬品の匂いしか通っていない。それに、波形というのは一体なんのことを言っているのだろうか?
 彼は説明をするでもなく、合わせた薬品を漏斗から試験管に流し込み、軽く一息ついた。

「じゃあこれの反応を待ってる間に処理しに行こうか。」
「え、えぇ…」

 つくづく、彼が何者なのか分からない。

────────────

 襲撃してきた妖怪を退治し、何とか収まった。今回のように都へ襲撃してくる妖怪はあまり多くはない。が、彼の力もあり難なく対処ができた。
 そう、彼の力が…

「ねぇ、零。」
「どうした?」 

 やはり、先ほどのことを無視するわけにはいかない。彼の頭脳や彼の能力は、文献にも載っていないし、出会ったこともなかった。彼自身も分かっていないようだし、その為に私の元へとやってきたわけだから。

「貴方、さっき匂いと波形で妖怪が居ること知ってたみたいなこと言っていたけれど、ここから私たちがいた研究所まで結構離れてたわよ?鼻が良いって言葉じゃ済まされないわ。」

 犬なんか、比じゃない。距離にして約30km。余程強い力を持った何が本気を出さない限り、とても存在なんかを感じ取ることはできない。

「う~ん、俺の能力みたいなものかな。」
「と言うと?」
「これは完全に俺の予想になるのだけれど、永琳は人間の脳は100%中10%しか使われていないっていう仮説があるのは知っているか?」
「えぇ、まだ判明はしてない最近できた仮説ね。」

 その仮説と零の異様な能力はどのように結びつくのだろうか。それに、彼もあくまで予想ということで、彼自身も断言ができるほど確信はしていないのか。
 少なくとも、これが一番近い彼の仮説ということだ。

「もしかしたら、俺は脳を100%活用できているのかもしれない。」

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