ハーメルン
【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥
第十章 二人の猛者、大いに乱れ舞う
畳を踏む音も高く、悪魔の群れが迫りくる中。
頬を引きつらせて星命がつぶやく。
「ど、どうするんだい、あれ」
特に返答はせず――答えは決まっている、とでもいうように――、ライドウは凪に声をかける。
「下がっていてくれ」
鎖で縛り上げたもう一人の星命を示して、悲鳴嶼はライドウに言う。
「頼みがある。先程のつるのようなもので、この者を束縛しておいてくれないか。鎖を使いたい」
ライドウがうなずくと、傍らでアルラウネが手を伸ばす。音もなく荊が伸び、鎖の部分をよけてもう一人の星命、クラリオンに巻きついた。
悲鳴嶼は鎖をほどき、構え直す。そして、じっ、と、敵の群れに耳を向けた。
ライドウの視線の気配に気づいたのか、悲鳴嶼は言った。
「いや、何。鬼というものは複数でいることが少ない、それが奴らの習性のようだ。故、今回のことは新鮮でな。悪魔というものはこれ程に群れを作るのか?」
「複数でいることはよくありますが。これほどの数を見たことは、二、三の例しか」
悲鳴嶼はライドウに顔を向け、薄くほほ笑んだ。
「その割には冷静でいるようだ」
ライドウも、同じ顔で悲鳴嶼を見る。
「あなたこそ」
だが、と悲鳴嶼は首をかしげる。
「妙だ。このようなものが群れでいるのなら、何故悪魔とやらが鬼殺隊の
耳目
(
じもく
)
に入らなかったのか……」
信じてもらえないかもしれないが、と前置きしてライドウは言う。
「自分たちは別の世界から来ました。……あなたたちの言う『鬼』ではなく、『悪魔』のいる別の帝都。……こちらの『鬼』に呼ばれた『悪魔』を追って、自分たちはこの世界を訪れた」
悲鳴嶼は目を瞬かせる。
「……どういうことだ」
そのとき、玄弥が駆け寄ってくる。
「悲鳴嶼さん、俺も――」
「下がっていろ」
「ですが……」
悲鳴嶼は玄弥に背を向ける。
「下がっていろ。私の言いたいことが分かるか」
悪魔の群れに顔を向けたまま続ける。
「背後の護りを任せる。――頼むぞ」
「……はい!」
強く返事をし、凪たちの方へ駆けていった。
ライドウは口元でほほ笑む。
「仲が良いようだ」
悲鳴嶼は小さくかぶりを振る。
「お恥ずかしい。……玄弥はよくやっているが、私の方が。人に信を置くことが苦手なのだろう……弱いことだ」
気持ちを入れ替えるようにまたかぶりを振り、悲鳴嶼は言った。
「さて。私の方から先に一手、出させてもらってよろしいか」
ライドウが視線を向けると、察したように続けて言った。
「悪魔とやら、それにこの数。不慣れ故、先に試させて欲しい」
ライドウはうなずく。
「頼みました」
悲鳴嶼の鉄球が宙に持ち上げられたかと思うと、鎖が孤を描き、空を裂いて回転を始める。空を裂くその音がいよいよ重くかつ速くなったそのとき。
声もなく悲鳴嶼はそれを横殴りに放ち。
同じく声もなく、雪玉を岩に投げつけた如く。鉄球の当たる範囲にいた悪魔が、
粉微塵
(
こなみじん
)
に砕かれて消えた。
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