ハーメルン
【鬼滅×葛葉ライドウ】デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 鬼殺隊岩柱 悲鳴嶼行冥
第十一章 二人の星命、向き合い語る
ライドウと悲鳴嶼の戦いを、離れた所で遠目に見ながら。
「ひゃー、ヤっバいなぁアレ……」
霊
(
アストラル
)
体の
安倍星命
(
あべせいめい
)
は、誰に言うともなくつぶやいた。
凪や玄弥は離れた場所で後方を警戒している。
「何がヤバいってさ。あれだけできる人間が二人もいるってことだよ、世界中探して一人いるかどうかってのがさ。いや……案外出会うもんなのかな、なにせ。世界が二つ――それ以上なのかな――あるぐらいだからね」
今度は明らかに、彼の目を見て言った。もう一人の安倍星命、拘束されたクラリオンを。
「……」
表情を変えないクラリオンに星命が言う。
「いや、別に僕の感想を言ってるワケじゃないんだよ。今言ったのは『君から見ての感想』、その予想だ」
「……!」
わずか、表情に険を見せたクラリオンに。
静かに――かすか、ほほ笑みさえ浮かべて――星命が言う。
「分かるよ、僕らは一つだったわけだし――まあ星命の残留思念でしかない僕は? 君がカレーで星命がご飯なら、お皿にくっついたご飯粒みたいなもんですけど? ――いや、それはいいんだ」
表情を消して続ける。
「君がわざわざ出てきて、あのヒメジマって人を騙そうとした理由。普通そんなことしないよね、だって君はかつて帝都一つを、あるいは地球すら喰らおうとした存在。ライドウくんだっていくつもの条件が重なって、やっと倒すことのできた存在。ライドウくんだってあの人だって、まとめてぺろっと食べちゃえばいいじゃない」
いら立ったように歯噛みをし、クラリオンは星命をにらむ。
視線を気にした風もなく、星命はその目を真っ直ぐに見る。
「――できなかったんだね、そんなこと。できるものならそうしたいけれど、できなかった。『今の君は、あの二人を同時には相手にできないほど弱っている』……それを君の行動が物語っている」
眼鏡を押し上げ、続けて言う。
「鉄球の彼がライドウくんほどの実力者である、そう見て取った君は身の危険を感じた。だが幸い二人は異世界の者、互いに知らないことも多い。上手くすれば同士討ちさせられる……そう考えた君は二人の様子をうかがい、機を見てヒメジマの部下のふりをした。しかも、死んだ人間や悪魔を模した、今出してるような出来そこないの分身じゃなく……比較的正確に人間を模すことのできる、君本体が。――つまり」
叩きつけるように続けた。
「『君本体をさらす危険を
冒
(
おか
)
してでも、二人を同士討ちさせる必要があった』――すなわち。『あの二人に組まれれば、今の君では太刀打ちできない』……そして今は、その二人が組んでいる」
表情は変わらぬまま。ぴくり、とクラリオンの肩が震える。
肩をすくめて星命は言う。
「まあ、僕が君から離れてライドウくんを探しに行った時点で、君が弱っているのは分かっていたけど。それからさほど回復もしていないようだし、『喰らったものを模す力』もたいして成功はしていない、そのようだね」
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