#0x09 Never say goodbye (1/2)
しかし返した僕の言葉に、彼女が居住まいを正した。
そうだ。たきなさんもまた、僕のこの手の勘のことはよく知っている。
「それは、やはりいつもの『勘』ですか」
頷く。
「それも、ある。だけどそれ以上に、真島は、恐らく千束に目をつけてると思うんだ。それまで何人も殺すことに成功してきたリコリスの中で、彼女だけが生き延びた。それを見逃すような男ではない、と思う」
「なるほど……ですが、明日の作戦で真島を捕獲できれば、問題ないはずです」
千束なしでも、どうにかできる。たきなさんは言外に、そう滲ませている。
しかしその想定は、恐らく甘い。僕は首を振った。
「確かに明日、あっさり真島が捕まってくれればいいけど。恐らくは、いやほぼ確実にそうはならない、と思う」
たきなさんは、その言葉に何も言わない。
心のどこかでそういう予感はしているのだろう。真島と相対した経験が、彼女にもあるのだから。
「そして、アイツは。今日以降の作戦の中、どこかで絶対に千束を誘い出そうとする。彼女が逃げられないような、死地に」
思い出すのは二か月前の、あの夜の光景だ。あの時の真島には雑念と、そして油断があった。だから千束は助かった。生き延びた。しかし今回は分からない。
だからこそ、打てる手は打っておきたかった。
「だからもし、今日以降の任務中で、千束に助けが必要だと思ったら」
手持ちのスマホに、目を落とす。切った視線の向こう、たきなさんが息を呑む音がした。
「このスマホで、君に。三回、ワン切りをする。そしてその次に、SMSで千束の位置情報を送る」
[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:8/9
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク