Apdx.01-02
僕たちが今回のハワイ旅行に際して立てていた計画は、今日、つまり三月の頭から始まって、そこから一か月の期間にまたがるものだった。平たく言えば、僕たちはここからのひと月ずっとこの地に滞在することになる。
そうなると、まず求められるべきはその期間における足だ。僕たちはその手段として、レンタカーを選んでいた。
実のところその契約自体は、出発前に既に日本で結んであった。故にむこうが提示してきた指示書に従って、空港にある営業所からワンボックスカーを粛々と手に入れる。そしてそれが済むなり、ミカさんとミズキさんの二人とは一度別れることになった。
何となれば僕たちは、さらにもう一台の車を借りる計画を持っていたからだ。当然にそれはただの車などではない。
否、勿体つけるまでもないだろう。即ち、フードトラックだった。
せっかくだからひと月ぐらいはここにいようかと決めたはいいものの、しかしそれはただの観光旅行にしてははっきり言って長い。物見遊山だけでは時間を持て余すだろうというのは、割と早くから全員の懸念として共有されていた。
なら、その間何をするのがいいか。それに対して千束が与えたアンサーというのが、「海外のお客さん相手に商売をしてみたい」という、彼女自身の望みだった。こういう機会でもなければ、外国でお店を開くこともないだろうと、そう彼女は力説した。
なるほど、尤もな理屈だった。当然にそれには全員が賛意を示し、結果ハワイ滞在中の一か月限定で「喫茶リコリコ・ハワイ支店」を開くことが、この旅行のメインイベントの一つとなった。
もはや言うまでもないが、フードトラックとは当然そのためのものだ。そして僕たちが何個ものキャリーバッグに分けて持ってきた商売道具もまた、喫茶リコリコでコーヒーを淹れるために使っている調理器具の類に他ならない。フードトラックのデコレーションに使う喫茶リコリコ風の壁紙素材も、そこには積まれていた。
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