Apdx.01-04
ハワイに来て、二週間余りが経った。
これまでにあった二度の定休日は、片時も無駄にしてはならぬとばかりにあるとあらゆるオアフ島のレジャーで埋め尽くされていた。そしてそんな中でも記憶に強く残るのは、やはり海のことだ。この南国の島の海には不思議な魔力でも宿っているのか、基本的にあまり外には出たがらないクルミも、或は真面目と実直が服を着て歩いているようなたきなさんでさえも、浜辺では普段の姿からは想像もできないような表情と振る舞いを見せていた。
ならば、況や千束においてをや、だろう。彼女は都度その全力を以てレジャーに勤しみ、誰よりも率先して飛び込んで、どこまでも楽しそうに笑っていた。彼女自身がどう思っているかは知らないが、それでもその姿を見られるという今の時間そのものが、やはり僕にはどうしてもかけがえのないものに感じられて仕方がなかった。
そういえば、と思い返す。その二度の定休日、海に出向く彼女の装いはいずれも、恐らく日本から持ってきたであろう水着だった。
サーモンピンクのトップスに黒のボトムスを合わせた、恐らくはスポーツビキニリコリコ円盤二巻ジャケットの服装だ。それはデザインよりも実用性を重視していて、どこまでも海を楽しみ尽くすことを主眼に置いた彼女らしい選択だと思わされる。
ちなみに日本からは水着を持ってきていなかったはずのたきなさんだが、最初の定休日にはどこから調達したのかわからない全身タイプのウェットスーツを身に纏って僕たちの前に現れた。あまりにらし過ぎて少し笑ってしまいそうになったが、それでもそれは確かにマリンレジャーにおける最適解には相違ない。そっちはそっちで、遊ぶことにも本気で当たろうという意気込みすら感じられた。
ただ何であれ、ハワイ初日にわざわざ僕に選ばせた件の水着については、千束にせよたきなさんにせよ、未だお披露目とはなっていない。僕のいまいちあやふやな記憶がそれでも確かならば、彼女はいつか僕にそれを着た姿を見せると言っていたはずだが、最低でもその時は未だやってきていなかった。
そしてその二回の休日を経て、そろそろハワイ滞在も後半戦に入ろうとしている。あと二回残っている定休日については、恐らく千束がどうしてもやりたいと言って聞かなかったスカイダイビングや、オアフ島ではない離島のレジャーに使うことになるだろう。
ミカさんとしては、ハワイ島のコナ・コーヒーをどうしても現地で堪能したいらしい。あとできれば生豆を仕入れたいとも言っていた。植物検疫を通す面倒を押してでも手に入れたいだけの何かが、彼の中にはきっとあるのだろう。
僕としてもキラウェア火山を現地で見てみたい欲求は強く、ハワイ島に出向く予定の次の定休日が、早くも楽しみになっていたりした。
そこまで回顧した辺りで、やはりというか、僕の頭には一つ大きな宿題について思いが至る。千束との関係を、どう定めるかについてだ。
[9]前話 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:1/12
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク