ハーメルン
とある英霊の一方通行
夢を見た少女

「大丈夫ですから、先輩! 私は平気ですから、兄さんの事は気にしないでください!」
居間に入ろうと一方通行が襖に手をかける前に、勢いよく襖が開かれた。
何だ? と疑問を抱く前に中から衛宮と、そして紫色の髪をした……確か桜と呼ばれていた少女が飛び出すように出てきた。
「お願いです……私が悪いんです! ですから────!!」
何度も同じような事を叫びながら桜が衛宮の後を追う。それでも衛宮は一言も答える事なく、そのまま玄関から出て行ってしまった。
桜も一緒になって出ていく。
朝起きて、いきなりの出来事に一方通行が困惑したような顔をしながら居間に座っているセイバーの方を見た。
「…………何キレてんだ、アイツ?」
玄関の方を指差しながら質問をする。
それに対して、セイバーが少し困ったような顔をしながら、
「それが──────」



「─────昨日ライダーと戦闘して、そいつのマスターがアイツの兄貴で、そいつがお前らに負けた腹いせに妹の顔を殴ったから衛宮がキレてる、って訳か」
「ええ。私としても、ライダーのマスターの行いは許される物ではないと思います。ただ、桜は平気だと仰っているので、どうにも……」
「──────、」
複雑だな、と一方通行は思う。
日常的なのかどうかは知らないが、家庭内のDVというのは、いささか厄介なモノだ。対応しようがしまいが、第三者が手を加えてしまった時点で、被害者には確実に何かしらの傷を負う事になる。
対応として第三者が助ける事が一番の正解なのだろう。だが、それでもやり方を一歩間違えれば更に悪化する可能性も十分にあり得る話だ。
「まァ、これはアイツの問題だろ。俺らが口出ししても逆効果って奴だ」
「そう、ですか……私には難しい問題です」
セイバーの顔は暗い。
それは桜の事が心配だというよりも、何か別の事を思い出しているかのようだった。
「……にしても、ライダーか。一体、どンな奴だったンだ?」
適当な話題を振る。
この面倒臭い雰囲気を払う為だったら、別に何でも良い。
「そうですね。桃色の髪に目にはバイザーを掛け、鎖が付いた短剣を操っていました。私の見解としては、ライダーというよりも、アサシンの方が近かったです」
「……それだけか?」
意外とあっさりとした説明に、一方通行は眉をひそめる。
「はい。相手が宝具を使う前に倒すことが出来たので、これ以上は何も」
「宝具?」
ここに来て、聞き慣れない言葉が出てきた。
「ええ、宝具です。────そういえば、アクセラレータは宝具……というよりも、サーヴァントについて基本的な説明は受けていませんでしたか?」
「……まァな」
一応、サーヴァントに割り振られているクラスなどについては説明されている。しかし、それ以外は何も分からないと言ったのが現状だった。
「分かりました。折角なので、此処で説明するとしましょう」
セイバーは小さく頷くと、
「宝具とは、簡単に言ってしまえばサーヴァントが持つ武装。又は、切り札のようなモノ。生前に残した伝説が具現化した存在と思ってもらえれば構いません」
と、一方通行は説明が続く前に「一旦待て」と、話を止めた。
それを受けてセイバーは首を傾げる。
「そもそもの話、俺は『サーヴァント』ってのについて知らねェンだ。宝具だとか、伝説だとか、当たり前のように出されても頭に入ってこねェよ」

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