ハーメルン
とある英霊の一方通行
近づく異世界



頭上から、声が聞こえた。
「─────! シロウ!!」
セイバーが前に出た。
手を横に伸ばして、下がっていろと無言で合図を出して頭上を見上げる。
見上げた先は、街灯の頭部分だった。
五メートルはある棒の先に、平な形をしている照明が作られている。
下に向けられた光の背後。
平らな鉄の部分に、誰かが座っていた。
姿は街灯の上に立っている事もあって、よく見えない。暗くて見えないのではなく、照明の光が視界を奪っているのだ。
「よっ、と」
だが、その姿はすぐに見える事になる。
上に立っていた人物が、五メートルもの高さを何もなしに飛び降りたからだ。
カツ、と軽い音を立てながら着地する。
それだけで、周囲一体に正体不明の莫大な重圧がのしかかる。
まるで、初めて一方通行と対面した時のような。
「クソ野郎のツンデレほど、醜いモノはねえ。お前らも、そう思うだろ?」
その姿が街灯によって照らされる。
茶髪に栗色のスーツを着た、ホストを連想させる少年だった。
歳は、さほど変わらないと思う。
それでも、周囲に纏っている雰囲気は完全に別次元だ。一般的な生活をしていて、身につけられるようなモノじゃない。
人間が獲得する『悪意』を、自在に操って放出し続けているみたいだ。
「貴様、何者だ?」
ズイ、とセイバーが更に前へと出る。
武装はしていないが、完全に戦闘態勢に入っているのが直感で分かった。
セイバーも目の前の少年の異常さを感じ取っているのだろう。いつも通りの凛とした表情だが、その頬には一筋の汗が流れていた。
「何者か、だって?」
少年は、ゆったりと笑う。
「そうだな。まあ、ここで言っちまっても問題はねえか」
と、少年は自分で納得する。
闇夜に蠢く悪意を漂わせながら、少年は片方の手をポケットに突っ込むと、


「垣根帝督。もし生きて帰れたら、第一位のクソ野郎にも伝えとけ」




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