ハーメルン
とある英霊の一方通行
一方通行

もしもエイワスが使う力がいわゆる『魔術』と呼ばれるものであれば、恐らくだが一方通行の『反射』は『魔術』には適応しない。
「チッ────、」
クソが、と一方通行は呟いた。
核爆発ですら無傷で耐えられる『反射』が簡単に突破されるなど、悪夢としか言いようがない。
「まァ、魔術じゃねェかもしンねェがよ……」
一方通行が一人で考え事をしている内に、いつの間にか爆心地のすぐ近くまで来ていた。
目の前の道を左に曲がれば音の正体が分かる。
バチバチ、と暗闇を照らす街灯が不気味に点滅する。
ここが、分岐点。
引き返すなら今しかない、と直感で思った。
恐らく、ここは曲がれば別の闇へと沈んでいくことになるのだろう。
「────、」
一方通行は、とある少女の顔を思い出した。
数秒ほど、その場で足を止める。
だが、数秒だけだった。
「バカが……慣れっこなンだよ。こンな事には」
カツ、と一方通行は杖をつきながら左を曲がろうと歩き始める。
まるで異世界にでも入ったかのような空気感が滲み出てくる。
何故か獰猛な獣のような声も聞こえた。
それでも足を止めない。
歩き続ける。
まるで、何かに誘われているかのように。




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バゴォォン!! という轟音が、今まで以上の音となって一方通行の耳へと届いた。
それもその筈、何故なら音の原因は目の前にあったからだ。
その原因は────、


「どォいう状況だ……コイツは」


目の前には四人の少年少女が立っていた。
四人中、一人は男。
赤髪が目立つジャージ姿の少年だった。
その隣には黒髪でツインテールの少女。
そこから少し離れた所に白髪で赤眼な幼い少女が立っている。
そして、その中間の位置にまるでコスプレでもしているのかと思える、鎧のような物を着た金髪の少女が立っていた。
だが、その中の誰よりも目を引くものが、そこには立っていた。
「なンだ、あの怪物────」
コスプレのような格好をしている少女の真正面に、巨大な怪物が立っていたのだ。
人間を遥かに凌駕する巨体に、岩のような黒い肌。無尽蔵に伸ばされている髪。
その姿は正しく怪物。
比喩表現などではない。
(ニメートルは軽く超えてやがる。ただのデカい人間って訳じゃなさそォだな)
一方通行の視線が、その巨人へ向けられた。
その向こう側の少年少女達も、一方通行に気がついたようで白い少女以外は驚いた顔をしていた。
「な────」
黒髪の少女は絞り出したかのような声を出す。
何かを言おうとしているのか口を半開きにするが、そこから声が出される事はなかった。
その代わりと言わんばかりに、赤髪の少年が一方通行に向かって大声で怒鳴りつけた。
「バカ!! 今すぐ逃げろ!!」
「あァ?」
一方通行の灼けるほどの赤い瞳が赤髪の少年へと向けられる。その瞳を向けられた少年は、まるで銃口を向けられているかのように、身体が自然と強張った。
その光景を白い少女は、新しい玩具を貰った子供のような笑みを浮かべながら、楽しそうに黒髪の少女へと声をかける。

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