ハーメルン
とある英霊の一方通行
すれ違う少年たち

「くっだらねえ町」
そう言いながら、つまらなさそうに路上を歩く一人の少年がいた。
数万人もの死者を出した新都での爆発。
その元凶とも言える少年。
学園都市の第二位、垣根帝督。
彼はコンビニの袋を手に持ちながら、昼間にしては人気が少ない町を眺める。その原因が自分だとわかっていながらも、垣根は悪びれる様子もなければ罪悪感もない。
ただ、ぶらぶらと放浪者のように歩き続けながら目的地を探す。
(公園がありゃ文句はねえが……)
垣根が持っている袋の中には、幾つかのコンビニ飯が入っている。公園を探しているのは、そこで昼食を取る為だ。
今現在、雪が降っているのが気になるところだが、それだけで目的を諦める気にはならない。そもそも『未元物質』のおかげで雪が肌に触れないし、寒さというものが感じ取れないので、垣根にとってさほど問題ではなかった。
「──────────お」
と、垣根が足が止める。
彼が見ている先には、一つの公園があった。
広さは一軒家が入るぐらいだ。
決して広いと言えず、遊具もブランコとすべり台というメジャーなものしかない。そして、その狭い空間には、数人の子どもがボールを持って遊んでいた。
雪が降っているというのに、よく外で遊ぼうと思えるな、と垣根は呆れる。
いや、雪が降っているから遊んでるのか。
「アホらしい」
本来であれば中央公園と呼ばれる場所で昼食を取ろうと思っていたのだが、昨日の夜に爆発があったらしく、警察が立ち入りを禁止している。
その為、面倒事が嫌いな垣根は別の場所に移動する事を強制された。数十分前までは何処かしらの飲食店にしようと考えていたのだが、ここら辺の店は大体休業になっているらしい。
だが、コンビニはやっている。
「社畜が」と垣根は場違いな悪態をついた。
「……」
垣根が公園に入る。
近くでサッカーらしき遊びをしている子どもを気にする素振りもなく、公園の端っこにポツンと設置されたベンチへと足を向けた。
ゆっくりとした調子で近づいていく。
ベンチの上には少しばかりの雪が積もり始めていた。それを垣根は手で軽く退かすと、そこに気怠げな雰囲気を出しながら座る。
数秒、無言で目の前の景色を眺めると、手に持っていた袋の中身をベンチの上に広げた。大抵はおにぎりに、レジで売られているチキンなど。
学園都市の第二位という称号を持っているにしては、至って普通の昼食だった。
(変化なし、か。逆に気持ち悪いな)
垣根がため息を吐きながら、おにぎりを口へと運ぶ。
バリバリ、と海苔の独特な音が響いた。
手に持っているおにぎりを眺めながら、無言で食べ続ける。空腹ではなかったため、満足感は感じられない。
それでも、美味しいとは思う。
「……変わんねえな、この味」
学園都市にあった物と同じだ。
形は変わらないし、味も大きな変化はない。


─────────そう、変わらない。


異世界のくせに、変化がないのだ。
こうして雪が降ることも、地面の質感も、人間の形だって。とにかく、元いた世界と根本的な部分で変化がない。別に疑問に思う事でもないのは分かっている。考えても無駄だということも。
ただ、気になるモノは気になる。
(学園都市がねえ。学園都市が無ければ、当然超能力もねえ。……何故だ?)

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