ハーメルン
とある英霊の一方通行
疑問

「極端な飾り付けだな。桜なンて見ててもつまンねェだろ」
一方通行が退屈そうに言った。
彼が口にした通り、見ているのは桜だ。
人が何人もの塊になりながら飯を食う光景。
と言っても、それはテレビで撮影されている画面越しのモノであり、立体感もクソもない。これで飯が食えるかと訊かれれば、Noだ。
と。
「そうかしら? 友人とお花見って案外楽しいものよ。……まぁ、ああいうのって人と一緒に楽しむのが一番の目的だから、桜じゃなくても大丈夫っちゃ大丈夫な感じはあるけど」
「ヘェ。玉ねぎの皮でも行けそうだな」
その脳死の答えに遠坂は苦笑する。
桜が咲き始めるのは三月の中旬からなのだが、朝のニュース番組が言うには、沖縄の方では既に咲き始めているらしい。やはりと言うか何というか、流石は沖縄と言った感じだ。
本島とは色々かけ離れている。
「サクラ、ですか……」
一方通行は少しだけ首を動かして、声のする方向をチラリと見た。
声の主はセイバーだ。
高貴さ溢れる正座をしながら、一方通行と遠坂と同じくテレビ画面に映し出されている桜を興味深そうに見ている。
一方通行は昨日の事を思い出して苦い顔をしながら、
「オマエ、外国人だから知らねェのか」
「え? ……ああ、いえ。一応は聖杯によってある程度の現代知識は与えられていますから、このサクラなる花の事は知っています。ただ、こうして直で見るのは初めてなもので」
直ではないが、と一方通行は内心思うが、そこは口に出さなかった。
というか、それよりも。
「聖杯によって、だと?」
その言葉の方が気になった。
セイバーは軽く頷く。
「はい。サーヴァントは現界する直前に、聖杯によってその地の言語に風習、一般的な生活を送るのに問題が無い程度の現代知識が付与されます。例えばですが、私が食事する際に箸を使うことが出来るのも聖杯のおかげです。生前はナイフとフォークで食事をとるのが主流でしたから」
今思い返してみると、セイバーは外国人のくせに箸の使い方が妙に上手かった。こうして言われてみなければ思い出せないほど、その光景に違和感を感じなかったのだと思う。
「日本語が話せンのも、ソレのお陰って訳か」
聖杯ってのは、思ったよりも色々な機能が搭載されているらしい。ただ願いを叶えるだけの器に見せかけて、実は何らかの意志を持っていたりするのだろうか。
「いや、それよりも」
その時、遠坂が聖杯云々よりも更に興味深そうな顔をしながらズイ、と一方通行に近づいた。
何だ、と怪訝な顔をする。
遠坂は構うことはなかった。
「わたし的には、貴方が日本語を話せる事の方が気になるんだけど。アクセラレータって、外国人なのよね?」
「……あァ?」
何を言ってるんだコイツは、と意味不明な質問に一方通行は困惑するが、すぐに何らかの勘違いをされていると察した。
はぁ、と一方通行はため息をつく。
「俺は日本人だクソボケ」
「え──────────えぇっ!?」
その答えに、遠坂が驚きながら身を引いた。
……セイバーも遠坂ほどではないが、かなり驚いた顔をしている。そこまで衝撃的な事実とは思えないが、そう思っているのは自分だけらしい。
「う、うそ!? いや、ほら! アクセラレータって、どっからどう考えても日本の名前じゃないでしょ!? キラキラネーム? 悪星羅零堕?」

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