ハーメルン
とある英霊の一方通行
不死身の狂戦士



一方通行は地面が凸凹しているクレーターを登り、そこから数十メートルほど移動していた。
瓦礫や岩が散乱しているの見ると、今更ながらやり過ぎたと思う。
それこそ学園都市で散々暴れまくったくせに何を今更、と思う人もいるかも知れないが、あれは一方通行を実験台にした学園都市の自業自得だ。この街には何も恨みはないので、少しだけ申し訳なさを感じる。
と言っても、申し訳なさを感じるだけで罪を償ったり、修理を手伝ったりなどの考えは微塵も無いのだが。
そう考えている内に、一方通行は四人の少年少女達の近くへと来ていた。
「……」
一方通行は周囲へと目を向ける。
戦闘時間が数分とはいえ、四人全員が律儀に待っていてくれたのを見て、一方通行は自然と鼻で笑った。
「バーサーカーは……?」
白い少女が一方通行へと疑問を投げかける。
「あァ、アイツの負けだ」
一方通行は、つまらないと言わんばかりの声を出して答えた。
実際に勝敗は決した。
殺せないのなら、殺さない方法で殺せばいい。
恐らく、今この場では一方通行に敵う者は存在しないだろう。
「そんな……まだ、ストックは充分に残っている筈なのに!」
「ストック?」
一方通行は眉を顰める。
ストックとは何だ。
「まさか、全部削りとったっていうの───!」
白い少女は叫ぶように質問するが、当の本人の一方通行は何の事かさっぱり分からなかった。
「オイ、専門用語をペラペラ使うンじゃねェ。意味が分かンねェだろうが」
一方通行は一段と声を低くする。
人を殺せるような声で喋る一方通行だが、白い少女は特に反応もなく、ただ俯いているだけだった。
(戦意喪失、か)
一方通行はくだらないと思った。
じゃり、と不安定な地面を杖をつきながら歩く。ゆっくりと動く姿は、まるで鎌を持った死神のようだった。
(……アイツと同じぐらいのガキだが、まァ仕方ねぇよな? 女だろうが、ガキだろうが、老人だろうが、赤ん坊だろうが、俺に喧嘩ふっかけた時点で全員敵なンだよ)
一方通行はどのように尋問しようか考える。
いや、もしかしたら拷問になるかもしれない。
だが、それでも良いと一方通行は思っている。
一方通行は元から、こういう人間だ。
喧嘩をふっかけた者には罰を下し、利用しようとする輩には破滅を与えた。そんな事を繰り返す内に、いつの間にか悪魔と呼ばれるようになっていた。
だが、一方通行はそれを否定しない。
昔も今も、自身が悪魔であるのにはなんの変わりないと思っている。
だが、それでも今となっては無理して悪の道へ進もうとは思わない。過去の自分が聞いたら笑い飛ばしそうだが、もう悪党である必要なんてないからだ。
(くだらねェけどよ……)
白い少女までの距離は、三メートルを切っていた。
一方通行は首元のチョーカーへと手を伸ばす。
(さて、と。最初に質問。それで答えねェようだったら、手始めに指でも弾くか)
近づく。
ニメートルを切る。
カチッ と首元のチョーカーのスイッチを押した。
準備は整った。
あとは、触れるだけで良い。
一方通行と白い少女との距離が一メートルを切ろうとする。
だが、


「待て」



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