世界の真実
「グッ─────!」
「それ以上、マスターにちかづいた場合、即座に叩き伏せます」
金髪の少女は一方通行の腕を掴み取れたことに多少驚くも、すぐに元の無表情のままそう言った。
ミシミシ、と人体から聞こえてはいけない音が腕から全身に響き渡る。
「ク、ソ……!!」
バッ! と全力で腕に力を加える事で、ようやくその拘束から解放される。
そして、首元のチョーカーへと手を伸ばした。
瞬間、金髪の少女も透明な剣を取り出して、戦闘態勢に入る。
「──────────」
沈黙が訪れた。
しかも、ただの沈黙じゃない。
この場一体に、莫大な『敵意』と『悪意』が収束していた。本物の恐怖を知らない子供がいたら気絶してしまう程の感情の渦。
何度か死線を潜り抜けたであろう赤髪の少年と黒髪の少女も、この場の圧力に押し潰されてしまいそうだった。
「────────」
動かない。
世界に闇が訪れる。
響いているのは、警察のサイレンだけだった。
両者ともピクリとも動かずに、超能力と英雄の視線が交差する。
そして、
「──────チッ」
一方通行が舌打ちをしながら、チョーカーから指を離した。
その動きを見て、少女の方も剣を下ろす。
徐々に、莫大な感情は蒸発するかのように世界へと消えていった。
「……だったら、これだけ聞かせろ」
一方通行が沈黙を破るように、声を上げた。
珍しく、汗を流す。
嫌な汗だ。
指も微かながら震えていた。
ここまでの恐怖を一方通行は知らない。
天井亜雄の時も、木原数多の時も、垣根提督の時も、エイワスの時も、番外個体の時も、レベル0の少年の時も、ロシアでの最後の時にも、こんな恐怖は感じていなかった。
本当の恐怖っていうのは、この事を言うのか?
「────学園都市って言葉に聞き覚えは?」
忘れる訳がない。
知らない訳がない。
聞き覚えがない訳がない。
外国ならまだしも、日本に住んでいたら知っていて当然の筈だ。知らない人間がいたら、本当の情弱、引きこもりなんてレベルを越えている。
だから、そんな筈が───────
「学園都市って……?」
それでも答えは。
拷問よりも悍ましい過酷な罰のようだった。
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